日本では約3,000万人もの方が腰痛に悩まされていると言われています。
健康のためウォーキングをしようと思っても、腰痛があっては心地よいウォーキングはできません。
ちまたでは色々な腰痛対策が提唱されています。
しかし腰痛の原因はさまざまで、原因を特定できることの方が少ないのが現状です。
色々な腰痛対策をしてみても、いまいち効果を実感できない、効果が一時的という方も多いはず。
リハビリの仕事に従事し、プライベートで競技スポーツをしている腰痛持ちの筆者。
その私が実践している、腰痛がスッキリするメンテナンス方法をご紹介します。
腰痛の原因と症状~心地よいウォーキングのために~
腰痛の原因は85%が原因が特定できない非特異性腰痛と言われています。
その中にはぎっくり腰も含まれ、腰痛症や坐骨神経痛という診断になります。
原因が特定される腰痛としては、
となっています。
症状としては、
・「じってしていても痛む」→内臓の病気や重い脊椎の病気の可能性
・「お尻や脚が痛む、しびれる」「しびれて長く歩けない」→ 椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症
と言われています。
その他、「背中が曲がってきた」場合は、骨粗しょう症による脊椎圧迫骨折の可能性があります。
女性は閉経後、最近は産後などホルモンバランスなどの影響で骨がもろくなりがちです。
これらの症状に当てはまる場合は、一度医療機関を受診することをお勧めします。
これらの腰痛の原因と症状は整形外科医が監修している以下の記事を参考にしています。
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_510.html
「体を動かしたときだけ痛む」場合は、筋肉やそのまわりの関節や組織が原因とされています。
一般的には、腰痛の際は背筋がピックアップされることが多いと思います。
しかし実際には、背筋のみに働きかけても効果が薄い場合もあります。
そういう場合は、今回お伝えする腹筋を柔らかくする方法が効果を発揮する可能性があります。
腰痛と腹筋 ~心地よいウォーキングのために~
ここからは腹筋と腰痛の関係をひも解いていきます。
腹筋の種類とそれぞれの位置・作用
まずは大まかにでよいので、腹筋が位置する場所をイメージしてもらいます。
腹筋は表層から深層まで、以下の種類があります。
・腹直筋
・外腹斜筋
・内腹斜筋
・腹横筋
それぞれの位置と作用をみてみましょう。
腹直筋
俗に言う「腹筋が割れている」とはこの腹直筋のことになります。
腹筋の中で最も体表面に位置する筋肉です。
中央には白線という腱が縦走し、その両側に左右の腹直筋があります。
位置 | 「剣状突起、第5~7肋軟骨」から「恥骨、恥骨結合」へ |
作用 | 腰部の前屈 |
分かりやすく言うと、胸骨のみぞおちやその付近の肋骨から、恥骨にかけて筋肉が付いています。
外腹斜筋
外腹斜筋は、腹直筋と広背筋の間を走行しています。
ほとんどの繊維は、後上方から斜め前下方に走行しますが、後部の繊維はほぼ垂直に走ります。
位置 | 「第5~12肋骨」から「腹直筋鞘と白線、腸骨稜」へ |
作用 | 腰部の前屈、側屈、反対側への回旋 |
分かりやすく言うと、肋骨から腹直筋・骨盤の上端にかけて筋肉が付いています。
内腹斜筋
内腹斜筋は、外腹斜筋の内側にあります。
繊維の走行は、ほとんどが下外方から上内方へ向かい、後部は上前方に、前部は水平ないし前下方に向かいます。
位置 | 「胸腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯」から「第10~12肋骨、腹直筋腱鞘と白線」へ |
作用 | 腰部の前屈、側屈、同側への回旋 |
分かりやすく言うと、腰まわりの骨盤の上端や鼠蹊部から、肋骨にかけて筋肉が付いています。
腹横筋
腹横筋はインナーマッスルの一部であり、ドローインなどで働くことが知られています。
位置 | 「第7~12肋骨、胸腰筋膜、腸骨稜、鼠径靭帯」から「腹直筋鞘」へ |
作用 | 内・外腹斜筋とともに腹圧を上昇させる |
ここでも分かりやすく言うと、肋骨、腰部、後方から前面の骨盤、鼠蹊部から、腹直筋にかけて筋肉が付いています。
これらの内容は以下を参考にし、記載しています。
基礎運動学 中村隆一 齋藤宏 長崎浩 著
それぞれの腹筋の位置・作用のまとめ
それぞれ腹筋の構造と機能を振り返ると、
・ほとんどの腹筋は、腰部を前屈させる作用がある
・腹直筋以外のすべての腹筋は、腰に近い場所から腹直筋に付着している
ということが言えます。
では、「腹筋が固い」「腹筋が柔らかい」とはどういう状態なのでしょうか?
まずは正常な腹筋と腰の関係をみていきましょう。
正常な腹筋と腰の関係
腰は上半身と下半身をつなぐ場所であり、骨としては腰椎がそれらをつないでいます。
つないでいる腰椎には、直立姿勢で重力下の地球で暮らす以上、体重分の負荷がかかっています。
また、歩く・走る・物を運ぶ際、足が地面に着くたびに衝撃が腰椎をはじめ体に跳ね返ってきます。
そこで人間は腰椎を含め、背骨をS字カーブに進化させました。
バネのように衝撃を逃がしつつ、反発する作用を手に入れたのです。
そのS字カーブという進化による恩恵は、骨の存在だけでは成り立ちません。
そもそもS字にカーブするという構造は不安定でもあります。
そこで重要なのが、背骨を支えるまわりの靭帯や筋肉。
背骨の後面→背筋
背骨の前面→腹筋
が背骨を支える役割を担っています。
特に腹筋の場合は、筋肉の張りを通して内臓を囲むお腹の膜に、前から腰椎方向に圧をかけます。
それが結果的に、背骨を前から支える機能を果たしていのです。
自身の体格にあった適度な張りのある腹筋と背筋がバランスよく背骨を支える。
そうであれば、普通の日常生活を送る上では基本的に腰痛は起きないはずです。
正常ではない腹筋と腰の関係
靭帯は特に病気や怪我をしなければ基本的に変化することは少ないです。
しかし、筋肉の強さは何もしなければ加齢とともに低下することが分かっています。
また、日常生活での心身のストレスは自律神経の影響で、腹筋や背筋を固くさせます。
固くなった筋肉は、伸びたり縮んだりするしなやかさを失った状態です。
結果、背骨を支える働きがアンバランスになり、腰痛が出現することが考えられます。
腹筋が固いと腰椎は後弯する
腹斜筋群の回旋や側屈作用は言わば、それらがまたぐ範囲の背骨の関節の遊びを伸び縮みすることで動かす作用です。
そうした中、腹筋が柔軟性を失い固い状態というのは背骨の遊びを制限することになります。
また、腹筋群のほとんどは前述したように、腰部の前屈作用を持っています。
固くなった腹筋によりその範囲の背骨は前屈したままになり、結果的に腰椎は後弯した状態になります。
結果的に、その場所で体重の支持や衝撃の吸収がうまくいかず、痛みがでる可能性があります。
腹筋が弱く張りがないと腰椎が過剰に前弯する
加齢や運動不足により腹筋が弱まると、腹筋は張りがなくなり伸びきった状態になります。
すると腰椎を支える前から後ろ方向への圧力が弱まります。
すると、本来腰椎が持っている前弯が過剰に強まります。
結果的に、その場所で体重の支持や衝撃の吸収がうまくいかず、痛みがでる可能性があります。
このタイプは、ウォーキングなどの適度な運動や、腹筋に刺激が入る運動が推奨されます。
ここまでの内容は以下のリハビリテーションの概念を参考にしています。
スパインダイナミクス療法
ちなみに産前、産後の腰痛はこれに近い状態と言えます。
そのため、産後の理学療法ではインナーマッスルと言われる腹横筋などの張りを整える治療が行われます。
簡単に腹筋を柔らかくする方法
そこで今回は腹筋が固くなり、腰椎の前後の支えがアンバランスになった場合の対処方法をご紹介します。
私は毎日仰向けになって筒状にしたヨガマットやバスタオルに体をのせて背骨のメンテナンスをします。
詳細は過去の記事でご紹介しています。
今回は、その筒にうつ伏せや横向きでのります。
体と筒を平行にした状態でうつ伏せでのる
筒に対して体を平行にした位置で、うつ伏せに寝ます。
筒から顔ははみ出す形が楽かと思います。
筒にのると体重が重しとなって、筒が当たっている腹筋全体が押されている状態になります。
広い範囲の腹筋に一定の刺激が入るため、比較的効いている感はマイルドです。
20秒程度しばらくそのまま心地よい刺激を感じておきます。
次にご紹介する筒にクロスさせて乗る方法が刺激が強く、痛く感じる。
そんな方はこちらから行うと腹筋全体が徐々に柔らかくなり、次の方法でより固くなった腹筋を柔らかくすることができます。
体と筒をクロスさせた状態でうつ伏せでのる
今度は筒に対して体をクロスさせた位置で、横向きに寝ます。
筒を当てる位置は、前述したように腹筋の走行する位置である、
「みぞおちから恥骨」
まで。
筒にのると体重が重しとなって、筒が当たっている場所の腹筋が押されている状態になります。
その中で痛みがある場所をみつけます。
心地よい程度の刺激になるように、適度に姿勢を変えます。
20秒程度しばらくそのまま心地よい刺激を感じておきます。
みぞおちから恥骨付近まで同様に痛みを感じる場所を探し、しばらく心地よい刺激を入れていきます。
おわりに
いかがでしたか?
最後にまとめます。
・動くと痛む腰痛は筋肉が原因の可能性がある
・腹筋も構造を考えると、その要因になり得る
・腹筋は腰から前についており、作用は腰部の前屈
・腹筋が固くなったり、張りがなくなると背骨の構造が崩れる
・固くなっている人は、ご紹介している方法でメンテナンスを
・張りがなくなっている人はウォーキングなど運動を
肩こりや足首の痛みで悩んでいる方はこちらをご覧ください。
今回の記事が皆さんの健康で豊かな暮らしの一助になれば幸いです。
では。
・椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症…10%
・内臓の病気によるもの…2%
・重い脊椎の病気…1%
・その他…2%