運動をすれば健康や美容にいい。
分かっちゃいるけど続かない。
そんな方は運動のやり方がまずいのかも。
運動による疲労をコントロールできれば運動が心地よくなり、運動を習慣化できるかもしれません。
そのポイントはあなたの運動中の感覚と心拍数。
科学的に証明され、リハビリテーションやスポーツの分野でも活用されている方法です。
気になる方はぜひご一読ください。
習慣化できないのは、はじめの運動で疲労がたまりすぎ?
健康や美容のために推奨される運動。
しかし、分かっていても習慣的に続けられる人は少ないのが実情ではないでしょうか。
続かない理由はさまざまですが、今回は運動のやり過ぎの疲労よる影響を考えてみます。
運動中に乳酸がたまりすぎているのかも
運動のやり過ぎで疲労がたまるとはどういう状態なのでしょうか?
ポイントは昔から疲労物質と言われている乳酸です。
運動中に乳酸が体内に多く産出されているかどうかです。
激しい運動を行ったときの細胞のエネルギー代謝
激しい運動を行った場合、開始20秒以内は、
が使用されます。
この反応はエネルギーの供給スピードは速いのですが、量が少ないため激しい運動では短時間に消費されてしまいます。
その後、1分経過する頃から、
②酸素を使わずに糖質からエネルギーを供給する解糖系
という代謝におきかわります。
そして徐々に、
③酸素と糖質や脂質を使ってエネルギーを供給する代謝
へ移行します。
酸素を取り込む余裕がある運動かない運動か
この②の過程で生成される物質が乳酸になります。
①から③までの過程をへながら、運動と酸素を体内に取り込む呼吸を同時に行うようなものが有酸素運動です。
酸素を取り込む余裕がなく①から②までの過程で終える短距離走のような運動を無酸素運動と言います。
当然、無酸素運動を繰り返していると乳酸がどんどん蓄積されて、疲労がたまります。
ここで重要なことは、乳酸の蓄積は、
・個人の体力の質
・運動自体の質
によります。
運動を行う人の体力によっては有酸素運動のつもりが、無酸素運動になり乳酸が蓄積し疲労してしまうおそれがあるということです。
同じ運動でも個人の体力の質で変わる運動の質
当然、乳酸は軽い運動より激しい運動の方がたまります。
しかし普段運動をしている人と、していない人が同じ強度の運動をしたとするとどうでしょう?
前者にとっては楽に感じる運動でも、後者にとってはきつい運動に感じることもあるでしょう。
運動中の酸素の摂取量でわかる乳酸蓄積のボーダーライン
その運動の強度については、酸素摂取量で測ることができます。
激しい運動を行うと呼吸ははずみます。
結果的に運動中の酸素摂取量は増えます。
その酸素摂取量と血液中の乳酸濃度を調べると、酸素摂取量が増えると乳酸も増えることが分かっています。
そして普段運動をしていない人では、最大酸素摂取量の50~55%以上の強度になると、普段運動をしている人に比べ血中の乳酸の蓄積が起こり、乳酸の濃度が上昇することが分かっています。
その原因として、激しい運動のため組織の酸素欠乏が起こり、③でなく②によるエネルギー生成が起こるため、乳酸も増えると仮定されています。
この強度を無酸素性作業閾値(AT)と言います。
つまりこのATの範囲内で運動をすれば、
適度な乳酸の蓄積にとどめる
↓
運動のやり過ぎによる疲労を避ける
ことができると言えます。
乳酸蓄積のボーダーラインがわかる心拍数
しかし、 ATの目安である「最大酸素摂取量の50~55%以上の強度」と言われてもピンとくる人は少ないでしょう。
ここで役に立つのは、心拍数です。
最大心拍数の75%という運動強度は年齢や性別の影響を受けず、個人のATに一致する値であると言われています。
予測される最大心拍数は、「220-年齢」によって求めることができます。
例えば一般的な40歳であれば、最大心拍数は220-40/分=180回/分ですので、
ATは180×75/100=135回/分となります。
20歳 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 | ||
最大心拍数 | 200 | 190 | 180 | 170 | 160 | |
最大心拍数の75% | 150 | 約142 | 135 | 約127 | 120 |
高齢者や心臓病を持病にもつ方の最大心拍数を求める場合は、「200(あるいは180)」-年齢」を用いる方が安全です。
この心拍数内で運動することができれば、過度な乳酸の蓄積を防ぐことができます。
最近ではアップルウォッチなどで心拍数をタイムリーに測定することができます。
そうした機器を揃え、最大心拍数を把握した上で運動をすることは習慣的に運動を続ける手助けになると言えます。
運動中の感覚的な「きつさ」でわかる心拍数
しかし、そうした機器がないと心拍数は分からないのでしょうか?
実は運動中に自身で感じる疲労度と心拍数はある程度一致していることが分かっています。
自身で感じる運動の強度を数値化した指標で代表的なものでBrog(ボルグ)スケールというものがあります。
「非常に楽である」から「非常にきつい」まで運動中の主観的な強度を7段階で分けてあります。
その横にある数字に10をかけた数字が心拍数となります。
若年者を対象にこれらの数値の相関を調べた結果、ある程度の相関関係があることが分かっています。
あくまで主観ですので、性格といった個人差やその時の心身や環境の状態によって当てはまらないこともあるようですが…。
「楽である」から「ややきつい」 運動でAT内の心拍数に
Brogスケールでは、「楽である」から「ややきつい」の範囲での運動が推奨されています。
「楽である」は11、「ややきつい」は13ですので、心拍数は110~130回/分の範囲となります。
ほとんどの年齢層のおいて、最大心拍数の75%に近い数値です。
20歳 | 30歳 | 40歳 | 50歳 | 60歳 | ||
最大心拍数 | 200 | 190 | 180 | 170 | 160 | |
最大心拍数の75% | 150 | 約142 | 135 | 約127 | 120 |
つまり運動中は、「ちょっときつくなってきた」くらいで休憩を入れたり、負荷を下げる。
そうすることで過度な疲労の蓄積を避け、習慣的に運動を続けることができるのです。
おわりに
最後にまとめます。
疲労の原因、乳酸が溜まり出す手前でとどめておく
↓
最大心拍数(220-年齢)の75%の範囲で運動する
↓
「ややきつい」までの運動にしておく
結局、過去の記事でも運動と健康、運動と免疫などについて述べてきましたが、どれも適度な運動がよいという結論になっています。
また、運動の強度を知るためには、筋力やメッツという指標も参考になります。
ご自身の筋力を簡単に測りたい方は下記の記事をどうぞ。
身体活動におけるカロリー消費量から強度がわかるメッツが気になる方はこちらをどうぞ。
ちなみに今回の記事は、基礎運動学という参考書や健康長寿ネットを参考にさせてもらいました。
読者の皆さんの健康で豊かな生活の一助になれば幸いです。
では。
①筋肉の細胞内にあるエネルギーやエネルギー源