子育てに活かせる自己効力感を脳科学でひも解く

子どもの「出来た!」を引き出す「自己効力感」は、「報酬期待感」との掛け合わせで考える。

とある父さん

自己効力感の理論は分かったけど、科学的な根拠はあるの?

今回はそんなあなたに向けて、脳科学目線で自己効力感をひも解きます。

にぎり飯

心理学、生理学などをベースにリハビリを提供する作業療法士である私がご説明します。

この記事を読むメリット
  • 自己効力感と脳科学との関連が分かる
  • より子育てに自己効力感を活用できる
  • 子どもの「出来た!」が増え、豊かな子育てに

1~2分ほど読めば、自己効力感と脳科学との関連が見えてきますので、ぜひご一読下さい!

 

 自己効力感理論を脳科学で考えてみる

 以前、「自己効力感」と「報酬期待感」の掛け算によってヒトの行動は変わると述べさせてもらいました。

(詳しくは褒める子育て!子どもの成功体験につながる心理学の「自己効力感」をご参照下さい。)

とある物事に対して本人が抱いている意味や目的、それを「報酬期待感」と言います。

その「報酬」とは、良いイメージ、または悪いイメージをもつ、世の中にある様々な物事のことを指します。

例えば、

「お金」「ごちそう」「ゲーム機」「おかし」「罰金」

「昇進する」「合格する」「感謝される」「褒められる」「スタイルがよくなる」「怒られる」

など、形あるもの・ないもの様々です。

 

これらの「報酬」にひっぱられる形でヒトの行動は変わると考えています。

そして、そのとき脳内では、神経伝達物質である「ドーパミン」が非常に重要な役割を果たしていることが分かっています。

ここからは、そうしたことが分かる実験を述べていきます。

 

 報酬によりドーパミンが出て、行動が変わる

まずはネズミの実験からみてみましょう。

ネズミがあるレバーを引く

検者がドーパミンを出すネズミの脳の領域を刺激

ネズミはひたすらレバーを引き続ける

ネズミを絶食状態にする。

または、ネズミがレバーを引くと痛み刺激を与える

ネズミはレバーを引き続ける

ヒトでも同様の実験がされ、同様の成果が得られたそうです。

そして、その刺激がもたらす快楽に満足しており、刺激の除去を拒んだそうです。

 

つまり、ドーパミンが得られる行動は、快楽刺激となり「報酬」となりえるのです。

そして、その行動はかなり強い行動として残ることが分かります。

 

報酬がもらえると、もらえるまでの行動だけでドーパミンが出るように

次におさるさんの実験です。

①サルに暗室の椅子に座ってもらう。前方には信号機がある。

②信号機が光る

③サルが手元のボタンを押す

④報酬として、ジュースがもらえる

はじめは、④の瞬間にドーパミンを出す神経が反応していました。

しかし、同様の行動を繰り返していると、②の信号機が光った瞬間にドーパミンの神経が反応したそうです。

 

またその後、

信号機が光る

手元のボタンを押す

ジュースがもらえない

と、ドーパミンの神経の反応は減退したそうです。

 

つまり、ある行動によって「報酬」を得られるように繰り返されると、行動によって得られる「報酬」を予測するだけで、一定期間脳内では「報酬」が得られる状態になるということです。

 

まとめ

ここまでの実験結果から、子育てにも応用できると推測されることをまとめます。

 

お子さんが「親のして欲しいこと」に関心を持ったら、

以前、述べたようにお子さんの好みにあった「報酬」を用意し、課題の難易度を調整しながら課題に取り組ませ、自己効力感を高めつつ、終わったら報酬をあげる。

方法についての詳細は、子どもに自己効力感を使うポイントと実例をご参照ください。

 

そうした「適切な難易度の調整」と「適切な報酬の設定」を繰り返す。

するとお子さんは「親御さんのして欲しいこと」から得られた報酬から、次第にそのこと自体に夢中になったり、習慣になっていくかもしれません。

 

おわりに

いかがでしたか?

今回は、方法論というより、その根拠となるような脳科学的なお話しをさせてもらいました。

 

しかし実験の対象は、動物が多く、また、報酬の種類もジュースなど形のあるものでした。

まとめでお話しした、「親がして欲しいこと」をお子さんにしてもらい、夢中になってもらうことや習慣になるには、やや論理的に飛躍した感がある方もいると思います。

また、痛みやジュースといった報酬に違和感を感じた方もいるのではないかと思います。

 

そうした飛躍した部分や違和感を、よりヒトの研究で脳科学的にわかりやすく説明した記事脳科学でひも解く自己効力感~子どものやる気スイッチが入る「報酬」とは~で解説しています。

ぜひ続けてご覧になって下さい。

では。

今回の実験の内容は

行動変容を導く!上肢機能回復アプローチ 脳卒中上肢麻痺に対する基本戦略 道免和久(監修)竹林崇(編集)

を参考にさせて頂いています。