楽しく野球をプレイする上でさまたげとなる肩や肘の痛み。
人によって、痛みが出る部位や投球のタイミングは異なります。
その痛みは「姿勢」が影響を与えており、姿勢は「筋肉」が作っています。
前回はその痛みの原因をひも解く「運動連鎖」の考えから、痛みの要因「姿勢」と姿勢を作る「筋肉」の探索方法についてご説明しました。
今回はその原因別のリハビリの効果判定に使われる評価法をご説明します。
今回は主に運動連鎖から考える投球障害 パフォーマンスUP! [ 森原徹 ]を参考に構成しています。
肩関節の評価法
可動域
CAT:combined abduction test
肩甲骨を固定し、肩甲上腕関節の外転可動域を評価します。
投球側が非投球側と比較して小さければ陽性
(肘の位置で比較するとわかりやすい)
HFT:horizontal flexion test
肩関節の後方のタイトネス(柔軟性)を評価します。
①背臥位で肩甲骨を固定
②もう一方の手で肩関節90度屈曲から水平内転させる
投球側が非投球側と比較して小さければ陽性
(肘の位置で比較するとわかりやすい)
肩関節3rdポジション内旋
肩関節の後方の柔軟性(柔軟性)を評価します。
①背臥位で肩関節3rdポジションをとる
②内旋させる
投球側が非投球側と比較して小さければ陽性
肩甲骨アライメント
座位で後方から肩甲骨を視診します。
肩甲骨の位置の左右差をみます
痛みのある投球側の肩甲骨が外転、下方回旋している場合は陽性
ストレステスト
肩関節内インピンジメントテスト(HERT:hyper external rotation test)
①座位で肩を90〜120°外転させる
②もう一方の手は肩甲骨を固定
③肘を固定し、ゆっくり外旋させ痛みを誘発させる
・過外旋させ、後方痛がでれば陽性
・前方に痛みがでた場合は、三角筋や前方関節包の伸長痛と評価
背臥位でのHERT
背臥位で肩関節90°外転外旋位で外旋強制させる
・肩関節内に疼痛を認めれば陽性
・不安定性も左右差があれば陽性
肩峰下インピンジメントテスト:Neer test
①座位で肩を約120°外転させ、肩峰を固定
②肩関節を内外旋させる
痛みがでれば陽性
Hawkins test
①座位で肩を約120°屈曲させ、肩峰を固定
②肩関節を内旋させる
痛みがでれば陽性
筋力
ET:elbow extension test
肩、肘関節90°屈曲位で肘関節を固定し、伸展させる
投球側の伸展が弱ければ陽性
EPT:elbow push test
肩、肘関節90°屈曲位で肩甲骨から上肢を前に押す
投球側の押しが弱ければ陽性
外旋筋力テスト
肘関節90°屈曲位で肩関節を外旋させる
投球側の外旋が弱ければ陽性
内旋筋力テスト
肘関節90°屈曲位で肩関節を内旋させる
投球側の内旋が弱ければ陽性
外転筋力テスト
肩関節を肩甲骨面上に外転させ、抵抗をかける
投球側の外転が弱ければ陽性
肘関節の評価法
可動域
屈曲
①肩関節屈曲90°または外転90°に保持させる
②肘関節を屈曲させる
左右の手首の位置を比較する
伸展
①肩関節屈曲90°または外転90°に保持させる
②肘関節を伸展させる
左右の手首の位置を比較する
前腕の回内制限があると肩関節内旋、回外制限があると肩関節外旋で代償する場合があります。
ストレステスト
外反ストレス
①肘関節を固定し前腕回外位にする
②肘関節を屈曲角度を30°〜120°の範囲で変化させながら外反強制する
痛みの発生、健側に比べて不安定性(エンドフィールドの消失)を認める場合
→内側側副靭帯の損傷を疑う
背臥位での肘関節外反ストレステスト
背臥位で肩関節90°外転外旋位で外反強制させる
・肘関節内側に痛みを認めれば陽性
・不安定性も左右差があれば陽性
伸展ストレステスト
肘頭と肘頭窩のインピンジメントによる痛みの有無を検出
①肘関節を固定し、前腕を回外位にする
②他動的に伸展強制を行う
肘関節後方に痛みがでれば陽性
筋力
環指、小指の屈曲筋力検査
環指と小指を把持し、屈曲させ、筋力の左右差をみる
肘内側障害や胸郭出口症候群では、しばしば尺側の筋力低下としびれ(尺骨神経領域である環小指側)を生じる。
まれに前腕屈筋群の萎縮を認めることも
胸郭出口症候群の誘発テスト:Wright test
肩関節90°外転外旋位で水平伸展させる
撓骨動脈の拍動が触知できなくなる、手掌が蒼白、しびれが増悪する場合は陽性
投球動作を模倣したテスト
肩関節90°外転で水平伸展、外旋し、頚部を投球側に回旋させる
撓骨動脈の拍動が触知できなくなれば陽性
手掌が蒼白、しびれの増悪があれば陽性
大胸筋、小胸筋、斜角筋の過緊張や短縮、伸張性低下
おわりに
いかがでしたか?
投球やスローイングにおける肩・肘の痛みの原因として、
「過剰な関節運動」「可動域制限」「体重移動のスムーズにできない」
↓
悪い姿勢
↓
筋肉のアンバランスさ
という流れがあります。
これらの仮説に対して、各部位の筋肉に対してスクリーニングテストを行い、その前後で今回ご紹介した各評価法を行うことで痛みや関節の動きの効果判定を行います。
効果があれば、各部位の筋肉へのエクササイズやトレーニングを行い、段階的な投球再開を始めることになります。
ちなみに「大人」と「子ども」の野球における「肩の痛み」は分けて考える必要があります。
気になる方は以下の記事をご覧ください。
子どもの骨は成長段階で脆弱でもあるため、下記の球数制限など考慮する必要があります。
練習 | |
小学生 | 週3日・2時間以内 |
中学生 | 週1日以上の休養日 |
高校生 | 週1日以上の休養日 |
全力投球数 | 1日 | 1週 |
小学生 | 50球 | 200球 |
中学生 | 70球 | 350球 |
高校生 | 100球 | 500球 |
今回の記事が、痛みなく野球をエンジョイするための一助になれば幸いです。
では。
①背臥位で肩甲骨を固定
②もう一方の手で肩を外転させる