多くのスポーツにおいて、膝は大きな役割を果たしています。
その分、怪我が多いのが実情です。
今回はその一つである半月板損傷について、スポーツ医学検定公式テキストをもとにご紹介していきます。
半月板損傷とは
半月板は膝の内側、外側の両側に存在する。
膝関節軟骨の保護作用のための耐衝撃機構が大きな役割である。
半月板損傷は、
などさまざまな形態を呈し、変形性関節症を引き起こすリスクとなる。
また前十字靭帯損傷などに合併して損傷することも多い。
治療は損傷形態や症状を考慮して保存療法と手術療法が選択される。
手術では部分切除や縫合術があり、近年器具や技術の革新により縫合術もアスリートに適応されるようになってきている。
半月板損傷の受傷機転・予防
半月板損傷は、
・繰り返しの外力で起こすもの
・一度の大きな外傷で引き起こすもの
・円状半月板のような先天的な形態に起因するもの
など様々な受傷機転が存在する。
スポーツに関してはサッカーでは外側半月板の前方が損傷しやすいなど競技特性を反映する損傷もある。
そのため保存療法や手術後のリハビリテーション、術後の再受傷予防に関しても損傷形態を考え行う必要がある。
また繰り返しの外傷で受傷するケースでは反対側の損傷も起こしやすいため、リハビリテーションは反対膝への介入も必要である。
外側半月板には、先天的に通常より大きい円板状半月板が見られることもあり、通常の半月板より損傷しやすい。
半月板損傷の症状
症状は形態によって異なるが、一般的には膝を捻った時に痛みを感じることが多い。
内側半月板損傷では膝の内側の痛みを、外側半月板損傷では膝の外側の痛みを訴える。
損傷部を刺激するような動作で痛みが出るため、痛みが出る特定の動作を本人がわかっている場合もある。
半月板が損傷し正常とは異なる位置に嵌頓としたロッキングの状態になった場合、足がつけられない痛みが強く、文字通り膝がロックしたように動かなくなることもある。
腫れがないことも多いため、腫れだけで損傷程度を把握することは不可能である。
嵌頓(かんとん)とは、「腸や子宮などの内蔵諸器官が、組織のすき間から脱出し、そのまま増大して腫れ上がり、もとに戻らなくなった状態」です。
引用:コトバンク
検査・診断
徒手検査ではMcMurray(マックマレー)テストがよく知られているが、徒手検査だけで診断確定は困難である。
半月板は軟骨の一種であるためX線検査では写らず、診断にはMRI検査が必須である。
MRI検査では損傷形態の把握だけでなく、軟骨損傷の合併やまた軟骨下骨の骨髄浮腫、また靭帯損傷の合併も確認できる。
下肢全体の形態の評価も必要なため、X線検査も必要である。
治療・復帰の流れ
治療では手術、保存療法のどちらも選択肢となる。
不安定性のない半月板損傷では、膝のアライメント修正や筋力トレーニングなどのアスレチックリハビリテーションによる保存療法でスポーツ復帰が期待できる。
競技への復帰は、動作の改善や痛みを目安として段階的に行う。
手術は通常関節鏡を用いて行われ、半月板部分切除術や半月板縫合術が行われる。
手術のなかでも半月板部分切除術では合併損傷などがなければ荷重制限や固定は必要なく、可及的な可動域訓練と筋力トレーニングが行える。
しかし、半月板は血行の少ない組織であり、一度切除すると再生は期待できない。
そのため、術後の症状再発防止のために、大腿四頭筋強化などの適切なアスレチックリハビリテーションを行わないと、半月板による耐衝撃機構が減少しているため、早期に軟骨損傷を起こす。
半月板切除術を行うと、長期的に高頻度に変形性膝関節症を起こすことが知られている。
半月板は屈伸や荷重によって移動する組織であり、半月板縫合術を行った場合、損傷部の癒合には免荷と固定が必要であり、復帰までには長い期間を要する。
通常2〜3ヶ月からジョギングを開始しスポーツ復帰は4ヶ月以降が目標となる。
損傷部が癒合した場合、半月板の耐衝撃機構の回復により、競技生活を長引かせることが期待できる。
近年の器具や技術の革新と相まって、半月板損傷に対して半月板縫合術が行われるケースが増加している。
また、軟骨損傷や靭帯損傷を合併する場合、それらの処置により復帰時期は変わってくる。
海外では人工の半月板や他人の半月板を移植するといった報告もあるが、日本では一般的に行われていない。
前十字靭帯損傷では、合併して半月板損傷を伴う頻度が高い。
半月板の辺縁部は血行があるため縫合術による修復が期待できるが、中央部は血行がないため、修復しずらい。
おわりに
最後にまとめます。
・繰り返しの外力
・一度の大きな外傷
・円状半月板のような先天的な形態に起因
・膝を捻った時
→内側半月板損傷では膝の内側に痛み
→外側半月板損傷では膝の外側に痛み
・半月板が損傷し飛び出してもとに戻らなくなった場合
→強い痛み(足がつけられない)、膝のロッキング(膝が動かなくなる)
・必ずしも腫れる訳ではない
・徒手検査→McMurray(マックマレー)テスト(診断確定は困難)
・半月板はX線検査では写らない(軟骨の一種であるため)
→下肢全体の形態の評価としては必要
・診断にはMRI検査が必須
→損傷形態の把握、軟骨損傷の合併、軟骨下骨の骨髄浮腫、靭帯損傷の合併を確認
・不安定性のない半月板損傷
→リハビリによる保存療法(膝のアライメント修正や筋力トレーニングなど)
→動作改善や痛みを目安として段階的に競技復帰へ
・荷重制限や固定は不要
→可及的な可動域訓練と筋力トレーニングが可
→しかし半月板は血行が少なく再生の期待は不可
→半月板による耐衝撃機構が減少
→早期に軟骨損傷のおそれ
→術後の症状再発防止のために、大腿四頭筋強化など適切なリハビリが必要
・長期的に高頻度に変形性膝関節症を起こす
・半月板は屈伸や荷重によって移動
→損傷部の癒合には免荷と固定が必要
→通常2〜3ヶ月からジョギングを開始
→スポーツ復帰は4ヶ月以降
・損傷部が癒合
→半月板の耐衝撃機構の回復
→競技生活を長引かせることが期待
・近年の器具や技術の革新と相まって、半月板縫合術が行われるケースが増加
以上、
スポーツ医学検定 公式テキスト 1級 [ 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構 ]の「半月板損傷」からの引用でした。
なおスポーツ医学検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。
今回の記事が、親子の「健全で楽しいスポーツ」につながれば幸いです。
では。
・縦断裂
・横断裂
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・弁状断裂