女性の月経と栄養とスポーツの向き合い方~スポーツ医学検定より~

女性は、男性にはない月経という周期的な心身の変化と付き合いながら日常を送っています。

スポーツに取り組む場合、スポーツ・栄養・月経との関連性についての知識が必要です。

でなければ、骨折のリスクやパフォーマンスが不安定になる恐れが…。

スポーツに取り組んでいる女性やそうした娘さんがいる親御さんは必見です。

今回、スポーツ医学検定公式テキスト1級「女性とスポーツ」をもとに作成しています。

女性とスポーツ

女性の月経と栄養とスポーツの向き合い方~スポーツ医学検定より~

スポーツに参加する女性に多い健康問題の一つとして、利用可能なエネルギー不足による無月経が挙げられ、疲労骨折との関連が明らかになっている。

また、月経痛や月経前症候群に代表される月経随伴症状は、女性アスリートのコンディションに影響を与えるため、試合に向けた事前の対策が必要となる。

 

利用可能エネルギー不足に伴う無月経

正常な月経周期は25~38日周期とされ、3カ月以上月経が止まることを続発性無月経という。

このため、3カ月以上月経が来ていない場合は、受診の対象となる。

無月経の原因は様々あるが、スポーツに参加している女性の無月経で最も多い原因は、

「運動に見合った食事が摂れていないこと(利用可能エネルギー不足)」

と考えられている。

機序は以下。

利用可能エネルギー不足の状態

脳からの周期的なホルモン分泌が抑制

無排卵

さらに利用可能エネルギー不足が改善されない

無月経

また、無月経に伴って卵巣から分泌されるエストロゲン値が低下すると、若年女性においても低骨量や骨粗しょう症につながる可能性がある。

無月経

卵巣から分泌されるエストロゲン値が低下

若年女性においても低骨量や骨粗しょう症

この、

・利用可能エネルギー不足

・無月経

・骨粗しょう症

は「女性アスリートの三主徴」と呼ばれ、疲労骨折のリスクを高めることが明らかになっている。

女性アスリートの三主徴は1997年にAmerican College of Sports Medicineが定義し、2007年に「摂食障害」が「利用可能エネルギー不足」に改められた。

 

月経随伴症状と月経周期調整

女性アスリートのコンディションに影響を与える代表的な婦人科の疾患として、月経困難症や過多月経、月経前症候群がある。

月経困難症とは、日常生活に支障を与える程度の月経痛を指す。

また、過多月経は月経の量が多い(血の塊が出る等)ことを指し貧血の原因となることがある。

月経前症候群とは、月経前3~10日の黄体期に、

・イライラや憂うつ等の精神的症状

・下腹部膨満感や下腹部痛、腰痛、浮腫、体重増加等の身体症状

がみられ、月経発来とともに減退ないし消失するものを言う。

また、91%の女性アスリートが、月経周期と主観的コンディションは関連があると感じていることが報告されている。

これらの月経随伴症状や月経周期の調節として最も使用される機会が多いものが、(超)低用量ピルである。

近年、服用を希望する選手は増加傾向にある。

月経周期の調節法には、一時的な調節法と継続的な調節法に分けられる。

 

一時的な月経周期調節法

次回の月経をずらす方法である。

この方法は、月経をずらすのみで、月経困難症や月経前症候群、過多月経の治療にはならない。

月経周期のなかで、

・主観的コンディションがよい時期に試合が来るようにしたい

・体重が落ちやすい時期に減量期をもっていきたい

・試合や遠征中に月経が重なりたくない

などの理由でこの方法を希望するケースがある。

薬剤中用量ピルを使用されることが多い
服用期間月経をずらしたい時だけ短期間
服用法ずらしたい月経の1回前の月経5~7日目から1日1錠薬を服用。服用終了後2~3日目に月経がくる。

 

継続的な月経周期調整法

年間を通してきてほしいときに月経を起こすとともに、月経困難症や月経前症候群、過多月経の治療も同時に行う際は、(超)低用量ピルを継続的に服用する方法をとる。

低用量ピルは、避妊薬というイメージが強いが、月経困難症の治療薬として保険適用になっている薬剤である。

低用量化が進んでおり副作用は軽減しているが、吐気や頭痛、不正出血、血栓症などがみられることがある。

そのため、目標とする試合の直前からの服用ではなく、2カ月位前までは婦人科を受診しておくことが望ましい。

薬剤超低用量ピル、低用量ピルが使用される機会が多い
服用期間継続して毎日服用
服用法月経を止めたい期間、1日1錠継続的に服用する。服用終了後2~3日に月経がくる。

なお2018年現在、日本で発売されている(超)低用量ピルにドーピング禁止物質は含まれていない。

 

おわりに

最後にまとめます。

女性アスリートの三主徴

・利用可能エネルギー不足

・無月経

・骨粗しょう症

利用可能エネルギー不足

無月経

卵巣から分泌されるエストロゲン値が低下

若年女性においても低骨量や骨粗しょう症

疲労骨折のリスク

女性アスリートに影響を与える代表婦人科疾患

・月経困難症→日常生活に支障を与える程度の月経痛

・過多月経→月経の量が多い(血の塊が出る等)こと

・月経前症候群→黄体期の心身の不調

一時的な月経周期調節法については以下。

目的次回の月経をずらす
薬剤中用量ピルを使用されることが多い
服用期間月経をずらしたい時だけ短期間
服用法ずらしたい月経の1回前の月経5~7日目から1日1錠薬を服用。服用終了後2~3日目に月経がくる。

継続的な月経周期調整法については以下。

目的年間を通した月経コントロール&月経困難症、月経前症候群、過多月経の治療
薬剤超低用量ピル、低用量ピルが使用される機会が多い
服用期間継続して毎日服用
服用法月経を止めたい期間、1日1錠継続的に服用する。服用終了後2~3日に月経がくる。

以上、

スポーツ医学検定 公式テキスト 1級 [ 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構 ]

の「女性とスポーツ」からの引用でした。

なおスポーツ医学検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。

自分自身だけでなく、家族も健康にスポーツを楽しむ。

今回の記事がその一助になれば幸いです。