テニスやゴルフ、野球、サッカーなどのプレイヤーで手首の痛みに悩まされている方。
それはTFCCと呼ばれる三角線維複合体の損傷かもしれません。
適切な治療を行えば痛みの改善と元の競技レベルまでの回復が可能です。
しかしそのまま痛みがあるまま無理をすると骨壊死になり、手術が必要になることも。
今回、スポーツ医学検定公式テキストより「三角線維複合体(TFCC)損傷」について述べていきます。
三角線維複合体(TFCC)損傷とは
手関節尺側にある三角線維複合体(TFCC:Triangular fibrocartilage complex)は手関節を安定させる役割をするハンモック様の構造をしている。
スポーツによるTFCC損傷の多くはテニスなどの反復外力によるものが多く、スポーツ動作だけでなく日常動作でも手関節を捻る動作で痛みを生じる。
保存療法では痛みの出るスポーツを休止し、サポーターなどを用いて手関節を固定し局所の安静を保つ必要がある。
競技の再開にあたっては、装具、テーピングの着用なども考慮する。
三角線維複合体(TFCC)損傷の受傷機転・予防
スポーツによるTFCC損傷は、
があり、
・前者はスノーボードやサッカーなどの転倒で手をつくこと
・後者は野球やテニスなどで反復的に回旋負荷が手関節にかかること
によって生じる。
特にテニスの利き手が最も多く、フォアハンドストロークで過度にスピンをかけるショットによる受傷が特徴的である。
また、ゴルフの非聞き手側において、ボールインパクトからフォロースルーで受傷することがある。
過度な手関節尺屈強制や尺屈回外強制には注意する必要がある。
しかし、完全に予防できるものではなく、症状を長引かせないことが重要である。
三角線維複合体(TFCC)損傷の症状
手関節、特に尺側の運動時痛、握力低下、手がまわしにくいなどが症状であり、スポーツ動作だけでなく日常生活での、
・ビンの蓋やドアノブを捻る
・タオルを絞る
・荷物を棚に上げる
といった動作で強い痛みを訴えることが多い。
またひっかかり感、手関節の緩み、抜ける感じなどを訴えることもある。
三角線維複合体損傷の検査・診断
診察では手関節尺側の圧痛、手関節可動域制限などを認める。
手関節尺屈強制や尺屈・回外強制により手関節尺側部痛の出現をみるulnocarpal stress testが有名である。
X線検査ではTFCCを描出できないため、手関節造影検査あるいはMRI検査が行われる。
三角線維複合体損傷の治療・復帰の流れ
治療には保存療法と手術がある。
保存療法では痛みの出るスポーツ動作を休止し、手関節の負担を減らす。
痛みが強い場合、サポーターなどで局所の安静を保つ。
保存療法に反応する場合は全体の76%で、3ヶ月以内に症状の改善が得られれる。
痛みの軽減に伴い、TFCCの近くを走行する尺側手根屈筋や尺側手根伸筋のストレッチ、握力強化、手関節周囲の筋力トレーニングを行う。
競技再開にあたっては、装具、テーピングの着用なども考慮する必要がある。
手関節に過剰に負荷が加わり続けた結果、月状骨に無腐性壊死であるキーンベック病が生じることがあり、保存療法で改善しない場合、橈骨短縮術が行われる。
手術は関節鏡でのクリーニングなどが行われるが、尺骨突き上げ症候群を伴う場合、尺骨骨切り術が行われることもある。
競技レベルの低下を生じている場合には、正しい診断の下に適切な治療法を選択することで元の競技レベルに復帰可能である。
おわりに
最後にまとめます。
・三角線維複合体は手関節尺側にある
→ハンモック様の構造で手関節を安定させる
・多くはテニスなどの反復外力によるもの
→日常動作でも手関節を捻る動作で痛み(+)
・保存療法では痛みの出るスポーツを休止
→サポーターなどで手関節の固定&局所の安静
・競技の再開には、装具、テーピングの着用なども考慮
・単発の外力で生じるもの
→スノーボードやサッカーなどの転倒で手をつく
・繰り返しの外力によるもの
→野球やテニスなどで反復的に回旋負荷が手関節にかかる
・テニスの利き手(最多)
→フォアハンドストロークで過度にスピンをかけるショットによる受傷が特徴的
・ゴルフの非聞き手側
→ボールインパクト〜フォロースルーで受傷
・過度な手関節尺屈強制や尺屈回外強制に注意
→完全な予防は不可
→症状を長引かせないことが重要
・手関節、特に尺側の運動時痛、握力低下、手がまわしにくいなどが症状
・スポーツ動作だけでなく以下の日常生活動作での強い痛み
→ビンの蓋やドアノブを捻る
→タオルを絞る
→荷物を棚に上げる
・ひっかかり感、手関節の緩み、抜ける感じなどを訴えることも
・診察では手関節尺側の圧痛、手関節可動域制限など(+)
・手関節尺屈強制や尺屈・回外強制
→手関節尺側部痛の出現(ulnocarpal stress test)
・X線検査ではTFCCの描出不可
→手関節造影検査あるいはMRI検査
・治療:保存療法と手術
・保存療法:痛みあるスポーツ動作の休止&手関節の負担↓
・痛みが強い場合:サポーターなどでの局所の安静
・全体の76%は保存療法に反応
→3ヶ月以内に症状は改善
・痛みの軽減に伴い以下を行う
①尺側手根屈筋や尺側手根伸筋のストレッチ
②握力強化
③手関節周囲の筋力トレーニング
・競技再開には装具、テーピングの着用など考慮
・手関節に過剰に負荷が加わり続ける
→月状骨に無腐性壊死であるキーンベック病が生じることがある
・保存療法での改善(−)→橈骨短縮術
・手術は関節鏡でのクリーニングなどが行われる
→尺骨突き上げ症候群を伴う場合、尺骨骨切り術
・競技レベル低下を生じていても、正しい診断&適切な治療法を選択
→元の競技レベルに復帰可能
以上、スポーツ医学検定 公式テキスト 1級 [ 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構 ]
の「三角線維複合体損傷」からの引用でした。
なおスポーツ医学検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。
読者の親子で健康で楽しいスポーツの一助になれば幸いです。
では。
・単発の外力で生じるもの
・繰り返しの外力によるもの