日本のプロ野球において、送りバントの成功数である「通算犠打数」が歴代3位である宮本慎也氏。
そんな宮本慎也氏が、バントのコツや練習方法について自身の動画サイトで紹介されています。
送りバントだけでなく、
のコツについても言及されています。
今回その貴重な動画の内容を文字で起こし、まとめました。
バントの基本(0:23〜)
まずはじめに、「バントは基本が分かって練習すれば絶対にうまくなる」と宮本氏は述べています。
理由として、ホームランを打てって言ってるわけではなく、その辺に転がせばよいため、体格や筋力などの身体的な差は関係ないためです。
バントにおけるバットの持ち方(0:40〜)
左手はバットの下の方を持ちます。
バントの時だけ普段から上の方を持っているとバスターの際に、
・単純に打ちにくい
・バスターに作戦が切り替わった際に急に左手の位置を変えると守備側にバレる
という欠点があります。
バスターとは、バントの構えから投手の投球動作に合わせてヒッティングに切り替えること。
右手の位置は上から3分の1くらいにします。
右手は握るのではなく、ボールを当てるところに指が出ないよう添えるようにします。
握るようにして指でバットをおおってしまうと、シュート回転したボールとバットに指が挟まり骨折などのリスクがあります。
具体的には、親指と人差し指、中指の3本をバットに添えられています。
ただし宮本氏の後半の実演の中では、小指まで握っておられます。
そしてボールは、バットに文字が書いてある場所に当てるようにします。
バントの立ち位置(1:35〜)
立ち位置は、一般的には「ベースより前」と言われています。
そうすることでフェアゾーンを広く使うことができます。
しかし宮本氏は「後ろに立っていた」とのことです。
理由としては、
・変化球は曲がり切ったところでしたかった
・バッターボックスはいつも後ろで立っており、変えたくなかった
と述べています。
基本は「前」とのことですが、前に立つ分、
・距離が近くなる分、ボールが速く感じるかも
・曲がる途中の変化球に対応することになる
というデメリットもあると述べています。
そのため基本は「前」ですが、「やりやすい所でやるとよい」とのことです。
バントの構え方(2:30〜)
「ピッチャーに正対するように構える」と指導する人もいます。
しかし投球が顔に来た場合、避けるのが難しくなり、大怪我するリスクがあると述べています。
そのため「打つのと同じ構え」がよいとのことです。
その方が、「距離感がつかみやすい」メリットがあります。
バットのヘッド(先端)は内角高めの位置にします。
その位置からボールを追いかけて行きます。
軸足である右足は、左足よりも少し後方に引きます。
そうすることでボールに対応する奥行きができると述べています。
左手の位置は、「腰のあたり」にしていた宮本氏ですが、それぞれやりやすい位置でよいとのことです。
「バットを立てる」ようによく指導されるかと思いますが、「立てる」意識が高すぎると、バットにこすったボールが顔に来る恐れがあります。
そのため実際のバットの動きとしては、「だんだん寝かしていく」方がよいとのこと。
ただしヘッドが下がりすぎはよくなく、「多少の下がり」はOKとのことです。
バントの重要なポイント(4:20〜)
注意点としては、「手だけで操作しない」ことを挙げられています。
目のある顔の位置は変えずに、バットだけ動かしてバントしようとしても失敗することが多くなります。
キャッチングのポイントでもお話されているように、「目とボールの間に道具を持っていく」ことがポイントです。
そのためバントする際は、バットと目の距離はできるだけ変えないまま、ボールにバットを合わせていきます。
恐怖心もあるかと思いますが、勇気を出してホームベースの上に顔を出すくらいしないといけないと述べられています。
バントにおけるバットの操作方法(5:35〜)
操作する手は、右手という人と左手という人に分かれます。
宮本氏は利き手である右手とのことですが、自分がやりやすい手でよいとのことです。
転がすボールの方向については、バットの角度次第です。
練習の中で「これぐらいの角度ならこの方向に行く」という感覚を身につけていきます。
右投げ左打ちの人のバントの方法(6:05〜)
右投げ左打ちの人は、軸足となる左足が前にする人が多いとのことです。
そうした方が投球が向かってきても逃げられる上、走る方向も同じであるためではないかと述べられています。
ただし軸足は引いた方が、距離感はつかみやすくなります。
「人それぞれやりやすい方法でよい」ようです。
スクイズの構え(6:55〜)
スクイズになると、正対する構えが多くなります。
スクイズとは、バントをして3塁走者を本塁へ返す戦術。走者は投球とともにスタートをきるため、打者は必ずバットにボールを当て、転がす必要がある。
理由としては、どんなボールでもフェアゾーンに落としたいことが挙げられています。
守備側にスクイズを読まれて外された場合でも最低バットに当ててファールにしなければ、走者がアウトになってしまいます。
そうしたことに備える意味合いもあるようですが、宮本氏は軸足は引く「通常のバントと同じ構え」をしていたとのこと。
外された場合でもバットを出せるよう準備もしていたとのことです。
そのため「人それぞれやりやすい方法でよい」ようです。
バントにおけるボールに当てる動作(7:25〜)
バントは「ボールに当たる瞬間、バットを引かないように」と指導されることもあるようです。
しかし、そうするとそのままの勢いでボールが返っていきます。
そのため、宮本氏はバットに当たる瞬間の動作として「ボールを優しくキャッチする」ようにと述べています。
「バットだけで引く」ように操作するのではなく、体とバットを一体化させ、クッションのようにボールを受けるイメージとのことです。
また、バントはコツンと当てるだけではなく、タイミングも必要だと述べています。
そのため、構えとともに少し体を動かしリズムをとるとよいでしょう。
右肘は軽く曲げた状態で、バットの位置は体より前にします。
そうすることで、目とボールの間にバットを置くことができ確実性が高まります。
また、クッションのようにボールを受ける「幅」を作ることができます。
バントでボールに当てるときのバットの角度は?(8:45〜)
はじめの構えとして、「バットのヘッド(先端)は内角高めに合わせておく」と前述されています。
そこからバットを投球の高さに上から下へ合わせていくため、実際当たる瞬間のバットの角度は「まっすぐ」か「少し下がる」とのことです。
バットの上から下への操作は、「バットは立てたままで膝を使う」ように指導する方もいます。
しかし、宮本氏は「はじめにバットを立てていた分の角度を使って下げる」とよいと述べています。
プッシュバントの方法(9:30〜)
次にプッシュバントの方法です。
プッシュバントとは、打球の勢いを弱める通常のバントと異なり、守備の間に強い打球を転がし自身も出塁しようとする戦術。
まずは、ピッチャーとファーストの間に転がるバットの角度を覚えておく必要があります。
そしてセーフティーバントでプッシュバントを選択する場合は、ギリギリまでバントの構えをしない人が多くいますが、構えが遅れると確実性が下がります。
そのため、投球前にはサード側に転がすバントの構えを作っておきます。
そうすると反応がよいピッチャーほどサード側に移動します。
あとは先ほどのピッチャーとファーストの間に転がるバットの角度に変え、「そのままの体勢でボールを足で押していく」イメージとのことです。
ボールに当たる瞬間だけ手だけで操作するとブレが生じます。
そのため、手では操作しません。
セーフティーバントの方法(10:32〜)
サード側に転がすセーフティーバントも、ギリギリまで構えをしないのではなく、早めに構えを作ります。
浅いカウントで選択されることが多い作戦になるため、「ファールでもよい」ので三塁線に近いいいバントを狙います。
コツとしては、当たる瞬間に少しヘッドを落とします。
そうすることで、三塁線に向かうボールの回転になりサードが捕って送球しにくくなります。
効果的なバントの練習方法(11:00〜)
実際にはバットは持たないバントの構えから、パートナーが下から投げたボールを右手でキャッチします。
ボールから顔を離さず、目とボールの間に右手を持っていく操作を意識します。
今度は右手でバットを持ち、実際にバントをしてボールを転がしていきます。
下から投げられたボールだけでなく、バッティングマシンなどの実戦に近い勢いのあるボールでも行い、どれくらいの力加減が必要かを確認していきます。
転がす方向や場所を具体的に決めて狙うことが大切です。
サード側へのバントのコツ(12:30〜)
サード側へのバントは、サードが捕球しないといけないようなボールを転がす必要があります。
ファースト側のバントのようにバットを引いてしまうとピッチャー側にボールが転がってしまいます。
そのため、バットは引かずに体を入れるイメージになります。
バントで1塁側と3塁側どちらに転がすか(13:05〜)
ランナー1塁の状況では、守備側はランナーの盗塁を防ぐ必要があります。
そのためファーストは、ピッチャーの1塁への牽制球を受けられる位置にとどまります。
一方、サードは3塁から離れて守ることができます。
攻撃側がバントの構えをした場合、サードに比べファーストは前進守備ができません。
そのため、ランナー1塁の送りバントは、1塁側に転がすことで成功する確率が高くなります。
ランナー2塁の状況では、サードは2塁ランナーの盗塁やバント処理の3塁への送球に備えるため、3塁付近にいる必要があります。
一方、ファーストは1塁から離れて守ることができます。
攻撃側がバントの構えをした場合、ファーストに比べサードの前進守備ができません。
しかもサードがバント処理することになれば、必然的に3塁は空き、守備側が2塁ランナーを3塁でアウトにするのはほぼ不可能です。
そのため、ランナー2塁の送りバントは、3塁側に転がすことで成功の確率が高くなります。
また、ボールをホームベースから2mほどの距離で止まるような勢いをなくしたバントができれば、転がす方向は関係なく送りバントは成功すると述べています。
打球の勢いがなく、前のめりの体勢で捕球をせざる得ない状況にすれば、守備側は流れるような素早い送球ができなくなります。
速いボールへのバントの対応(14:50〜)
バント練習では、遅いボールと速いボールどちらも練習する必要があるとのことです。
しかし、速いボールはピッチャーがボールをリリースする時には、タイミングを合わせて投球のライン上にバットを持っていっておく必要があります。
そのため速いボールを練習するのは、自分の中である程度バントの形ができてからがよいと述べています。
おわりに
最後にまとめます。
・左手はバットの下の方をもつ
→バスターなどの作戦変更にそなえる
・右手は上から3分の1くらいのところをもつ
→ボールを当てるところに指が出ないよう手を添える
・一般的には「ベースより前」
→フェアゾーンを広く使うことができる
→距離が近くなる分、ボールが速く感じるかも
→曲がる途中の変化球に対応することになる
・宮本氏はヒッティングのときと同じ「後ろに立っていた」
→変化球の曲がり切ったところでバントできる
→ピッチャーとの距離感を変えたくなかった
・やりやすい所でやるとよい
・ピッチャーに正対せず「打つのと同じ構え」
→距離感がつかみやすい
・バットのヘッド(先端)は内角高め
→その位置からボールを追いかける
・軸足である右足は、左足よりも少し後方に引く
→ボールに対応する奥行きができる
・左手はそれぞれやりやすい位置でよい
→宮本氏は「腰のあたり」にしていた
・バットの動きとしては、「だんだん寝かしていく」
→無理に立てる必要はない
→ただしヘッドが下がりすぎは✕、「多少の下がり」はOK
・右と左とどちらで操作するかは、自分がやりやすい手でよい
・転がすボールの方向については、バットの角度次第
→練習で「この角度ならこの方向」という感覚を身につける
・「手だけで操作しない」
→顔の位置は変えずに、バットだけ動かす
→失敗することが多い
→「目とボールの間に道具を持っていく」
・バットと目の距離はできるだけ変えないまま、ボールにバットを合わせる
→勇気を出してホームベースの上に顔を出すくらいの気持ちでやる
・バットに当たる瞬間、「ボールを優しくキャッチする」イメージ
→「バットだけで引く」操作は✕
→体とバットを一体化させ、クッションのようにボールを受ける
・右肘は軽く曲げ、バットの位置は体より前
→目とボールの間にバットを置くことができるため確実性が高まる
→クッションのようにボールを受ける「幅」を作る
・体を動かしリズムをとりながら、タイミングをあわせる
・はじめはバットのヘッド(先端)は内角高め
・そこから投球の高さに上から下へ合わせていく
→当たる瞬間のバットの角度は「まっすぐ」か「少し下がる」
・膝を使うのではなく「はじめにバットを立てていた分の角度を使って下げる」
・ランナー1塁の送りバントは、1塁側に転がす
・ランナー2塁の送りバントは、3塁側に転がす
・ピッチャーに正対する構えが多い
→フェアゾーンに落としやすい
・宮本氏は軸足は引く「通常のバントと同じ構え」をしていた
→「人それぞれやりやすい方法でよい」
・ただし外された場合でもバットに当てる準備は必要
・ギリギリまで構えをしないのではなく、早めに構えを作る
→「ファールでもよい」ので三塁線に近いいいバントを試みる
・コツは、当たる瞬間に少しヘッドを落とす
→三塁線に向かうボールの回転になりサードは送球しにくい
・まずピッチャーとファーストの間に転がるバットの角度を覚える
①投球前にはサード側に転がすバントの構えを作る
→反応がよいピッチャーほどサード側に移動
→構えが遅れると確実性が下がる
②ピッチャーとファーストの間に転がるバットの角度に変える
③「そのままの体勢でボールを足で押していく」
・手では操作しない
→ボールに当たる瞬間にブレが生じ確実性が下がる
①パートナーが下から投げたボールを、バットは持たずバントの構えから右手でキャッチ
→ボールから顔を離さず、目とボールの間に右手を持っていく操作を意識
②右手でバットを持ち、実際にバントしてボールを転がす
→下から投げられたボールだけでなく、バッティングマシンなどの実戦に近い勢いのあるボールでも行う
→どれくらいの力加減が必要かを確認していく
※転がす方向や場所を具体的に決めて狙うことが大切
・サード側へのバントはバットは引かずに体を入れる
→バットを引くとピッチャー側にボールが転がってしまう
・遅いボールと速いボールどちらも練習する必要がある
→速いボールはピッチャーがボールをリリースする時には、タイミングを合わせて投球のライン上にバットを持っていっておく必要がある
→速いボールを練習するのは、自分の中である程度バントの形ができてからがよい
いかがでしたか?
野球は他のスポーツに比べ、パワーやスピードといった体格などハンディがあっても戦術でカバーすることができます。
その中でも重要な戦術の一つであるバントを身につけることは、チームの勝利に貢献したり、チーム内での自身の価値を高めることにつながります。
今回のレジェンド宮本氏が教えてくれている大変貴重なバントのポイントを頭に入れて練習を行い、技術を高めつつ野球をエンジョイしましょう!
ちなみに走塁技術も体格のハンディをカバーするために必要です。
ぜひ下の記事をご参照ください。
では。
・セーフティーバント
・プッシュバント
・スクイズ