野球の基本中の基本、キャッチボール。
子を持つ親からすると、親子でキャッチボールなんて憧れますよね。
しかしそのキャッチボール、どう教えたら良いのでしょう?
多くの元プロ野球選手がYouTubeで動画を配信している現代。
その中で、年間で最も守備が上手な選手に贈られるゴールデングラブ賞という賞を何度も受賞している宮本慎也氏が配信している動画があります。
野球をしていた人間からすると「この人が言うのなら間違いない」という感じの方です。
実際動画を拝見しても、とても分かりやすく納得の内容になっています。
今回は宮本慎也氏がボールの「投げ方」と「捕り方」を解説している動画をご紹介しつつ、内容をまとめてみました。
ぜひご一読ください。
キャッチボールのポイント~投げる~
投球には各フェーズがあり、それぞれ分けて考えると理解しやすくなります。
今回はそれらの各フェーズに分けて、宮本慎也さんの「ボールを投げ方」の解説のポイントをまとめていきます。
ボールの握り方は逆C
投げる前にまずはボールの握り方から解説されています。(1:18~)
まず、縫い目が「Cの逆」になったボールを自分に向けます。
基本的に指は縫い目にしっかりかかっている方が、投げるときれいな回転がかかり、ボールをコントロールしやすくなります。
一般的に手の指は、人差し指よりも中指の方が長くなっています。
そのため、
・Cの向きで握る→中指が縫い目から外れる
・逆Cで握る→中指が縫い目にかかる
となり、逆Cの向きで人差し指と中指を縫い目にかけることが基本的な握りとなります。
そして、人差し指と中指は指1本分の間隔をあけます。
お子さんの場合はもう少しあけてもよいですし、大人になればより狭くなります。
次に、親指は人差し指と中指の真下にきます。
親指は指の腹ではなく横側でそえるように握ります。
最後に、曲げた薬指でボールを押さえるようにします。
そうすることで、小指の力も使え5本の指で投げることができます。
薬指が上に上がっていたり、浮いていたりしていると親指と人差し指、中指の3本で投げることになり、上手くボールを握ることができません。
捕球してすぐにボールを送球する必要のある野手は、この握りが基本になります。
しかしピッチャーの場合は、親指の第1関節を曲げて縫い目にかけ支える力を増やすこともあるようです。
コッキング期
コッキング期とは、上げていた前足が地面につくまでの時期です。
頭は股関節の上に
ポイントは、ボールを持った手が上がった姿勢の時に、
頭が後ろ足の付け根(股関節)に残っているか
になります。(4:16~)
頭が前足の上に乗ると、体が前に突っ込んでしまい安定したスローイングができません。
体が前につっこみ、後ろ足に頭を残すことが苦手な場合は、遠投をお勧めされています。(15:45~)
遠投は投げたあと、通常のキャッチボールより体は前に流れますが、ボールの軌道が上向きになるため必然的に後ろ足に体重が乗り、頭を後ろ足に残す練習になります。
昨今、実際のプレー中にそうしたボールの軌道を投げることはないため、賛否ある遠投ですが、そうしたメリットもありお勧めされています。
ボールは外に向けず、手から上げる
手の動きとしては、膝の軽い屈伸をしながら腕を閉じて開いてを行うラジオ体操のイメージです。(5:33~)
前足は軽く浮かした姿勢で体操の動きをするとイメージしやすいです。
その際、ボールを持った手は、ボールが内か正面を向くようにします。
昔はボールを外側に向けるよう言われていたようですが、余計なひねりが必要になり、コントロールが難しくなります。
そして肘の角度は90度前後にします。
それ以上あると肘にストレスかかり、怪我のリスクが高まりまると言われています。
また、肘から上げるのではなく、手から上げるようにします。
肘から上げると肩にストレスがかかり、怪我のリスクが高まります。
インバートWとスタンダードW
動画の13:10あたりから、インバートWとスタンダードWというワードが出てきます。
肘から上げるように意識すると両手の形がWの逆になり、手から上げるように意識すると両手の形は通常のWになります。
統計的に、インバートWの形をとる選手の方が、肘の怪我により手術が必要になることが分かっています。
そういう意味でも、怪我なく野球を楽しむためには手から上げるスタンダードWの形で投げる練習を行うとよいでしょう。
加速期~フォロースルー期
グローブは内向きにし、肘は腰へ
グローブを持つ手は、グローブの内面を外に向けるとその方向に体が横回転し、流れていくように作用します。(7:42~)
グローブの内側を体に向けることで、体の流れを防ぎ、縦の回転で投げることができます。
肘を腰に持って行く、脇を締めるイメージです。
体が横回転した投げる動作だと、悪送球の可能性の範囲が横の空間に広がり、コントロールが難しくなります。
縦回転で投げれば、横の空間への悪送球が少なく、コントロールが容易になります。
体の縦回転を利用した動作は、バレーボールのアタックや柔道の背負い投げなどにも共通する動作です。
それだけ、合理的な動作と言えます。
グローブを持つ手の使い方がどうしても難しく感じる場合は、顔の前や後ろ側へ残しておくとよいと述べられています。(13:50~)
そうすることで、余計に体が前につっこまず、縦回転でコントロールされたボールを投げることができます。
また、14:25~あたりで述べられていますが、素早い送球が必要なとき、距離が短いときは、グローブの手は離さない方がコントロールしやすくなります。
投げたあとは前足1本で立つ
前述したように、前足が地面につくまでには、頭を後ろ足の股関節の上にして体重を後ろ足に残しておきます。
しかし、前足が地面についてから(フットプラントと言います)は頭は前に移動していきます。
そして、投げたあと(フォロースルー期)は後ろ足は浮かして、前足1本で立つようにします。(10:53~)
そうすることで、余計に頭が前に行き過ぎず、バランスが崩れません。
結果的に、しっかりとコントロールされたボールが行くことになります。
相手がボールを捕るまでは、浮かした後ろ足は浮かしたままにする、と述べられています。
距離別のキャッチボールのポイント
キャッチボールは基本的に近い距離から始めて、徐々に離れていき、遠投に近い距離まで投げます。
そして肩が温まったら再度近づき、塁間程度から捕球したらすぐに投げる練習をしながら距離を近づけ、終了します。
捕球したらすぐ投げる必要がある内野手は、小さな動作で投げるよう指導される場合もあります。
しかし、宮本氏はキャッチボールはピッチャーになったつもりで投げることを勧めています。(16:25~)
相手にボールが届く間はピッチャーのように投げます。
そして、遠投になってくると助走をつけて大きく投げます。
距離が短い捕球してすぐの送球
最後の塁間の無駄な動作を省いた練習ですが、捕球してすぐ投げる場合は、
・後ろ足を前足より後方にひく→×
・後ろ足を前足のすぐ横に運ぶ→〇
と述べられています。(17:20~)
理由としては、そうすることで捕球してから次の動作につなげられると説明されています。
距離が短くなるにつれ、速く投げたくて体の向きを正面にしたまま投げる人がいますが、それはやめて欲しいと言われています。(18:48~)
距離が短くなっても、後ろ足は前足の横に運び、体を横向きにして投げます。
体は正面を向いたままでは、前に突っ込むため手首でのコントロールになり、正確な送球が難しくなります。
後ろ足は前足の横に運び、体を横向きにすることを省かずに投げることで、スローイングの幅が広く、送球のバリエーションやコントロールの幅が広がります。
キャッチボールのポイント~捕る~
次に「ボールの捕り方」を解説されている動画です。
芯で捕る
グローブの中でも、パチンと音が鳴る芯で捕ります。(0:57~)
それを繰り返すことで、脳がグローブの芯がどこに位置しているのか分かるようになります。
捕球とともにパチンと音が鳴らすことができるようになると、素早い送球が必要なときに、無駄なくボールの位置に手を運ぶことができ、素早い動作ができるようになります。
よく素早く投げるために「手や足を速く使え」と言われますが、まずは芯で捕ることが素早く投げるための前提条件という訳です。
芯の位置は人差し指の付け根
そのグローブの芯の位置ですが、「人差し指の付け根」あたりと言われています。(1:20~)
芯での捕球は痛みを伴いますが、徐々に皮が厚くなったりして体が適応してきます。
どうしても耐えられない人はグローブ手袋をしてもよいと述べられています。
普段のキャッチボールを芯での捕球に意識を向けることで、1球1球を疎かにせず、集中して取り組むことができるようになります。(2:32~)
キャッチボールは単なるウォーミングアップではなく、スローイングとキャッチの練習だと述べられています。
グローブは立てて、膝を使う
また、捕球の前には少し手首をかえすことを意識します。(4:00~)
そうすることで「グローブを立てる」ことができるようになります。
そして、よくありがちですが、ベルトより下のボールをグローブを下向きにして捕球するのはよくないと述べられています。(5:00~)
捕球は、自分の目とボールの間にグローブを入れるのが基本です。
グローブを下向きにして捕球はそれができません。
捕球の正確性が下がり、エラーやミスにつながります。
それを防ぐためには、出来るだけ膝を使って頭の位置を下げて立てたグローブで捕球するようにします。
ボールを握る手はどこ?
グローブの反対の手ですが、よく一般的に言われるグローブに無理にそえるのは必要はないとも述べられています。(7:00~)
相手から胸のあたりによいボールが来たときに、すぐに握り替えができる位置に持っていければよいと言われています。
くるぶしは送球方向へ
捕球後の足の運びですが、後ろ足のくるぶしを送球する方向に向けておきます。(7:15~)
そうすることで捕球とともに体を横向きにすることができます。
つま先の向きは?
前足は投げる方向に出しますが、つま先まで向けることは意識する必要はありません。(7:55~)
前足のつま先を最初から送球方向に向けると、体は開く方向に作用します。
体が成長し、ある程度体をコントロールできるようになると体は横向きのまま、つま先を投球方向に向けることができるようになります。
しかし、体が未発達の子どもはつま先を向けるように指導すると、体が開き送球が安定しなくなります。
そのため、最初はつま先は向ける意識はせず、体と同じ横向きのまま前足を出し、投げる際の体の回転の結果前向きになるイメージでもよいと述べられています。
捕球してから速く投げるには?
「当て捕り」という技術がありますが、まずは芯で捕れるようになってからと述べられています。(11:55~)
芯で捕ると頭と体が一致してきて、結果的に素早い送球になる。
どんなに手を速く動かそうとしても、芯で捕れなかったら速くできません。
その上で、捕球し速く投げるためには、足の運びを速くします。
捕球と同時に後ろ足を前足の横に移動させるイメージです。
送球を安定させる家の中でできる練習
まず、膝を立てて仰向きに寝ます。(14:40~)
次に、肘の角度は90度前後にします。
そして、手首を柔らかくしてできるだけ高く、回転を入れながら投げます。
捕球するときは手首をかえし、グローブをたてます。
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おわりに
最後にまとめます。
・ボールは逆Cの向きにして、人差し指と中指、親指、薬指をしっかりとかける
・後ろ足の股関節の上に頭を残す
・ボールを持つ手は、ボールは内向きまたは正面で、肘からではなく、手から上げる
・グローブを持つ手は、内側を体に向けて腰に引き寄せる
・投げた後は、後ろ足は浮かして前足で立つ
・始めはピッチャーのように体を大きく使って投げる
・捕球して素早く送球する際は、後ろ足は引かずに前足の横へ運ぶ
・体の向きは正面のままにせず、横向きにする
・グローブの芯(人差し指の付け根あたり)で捕る
・捕球時は手首をかえしてグローブを立てる
・グローブの位置は目とボールの延長線に
・ベルトより下のボールは膝を使い、グローブは下向きにしない
・後ろ足を前足の横に運ぶ
・後ろ足のくるぶしは送球方向に向ける
・前足は送球方向に出すが、つま先は無理に向けない
野球歴は25年以上の筆者ですが、まとめながら「そうなんだ!」「なるほど!」というものが多く、正直(現役時代に観たかった…)というのが本音です。
しかし、そこは正しいノウハウを子どもに伝えるのが親の役目です。
現代はSNSを通じて、実績のあるプロ野球選手が色々と発信してくれています。
それを使わない手はありません。
今回の記事が、親子で楽しくキャッチボールするためのスキルアップの一助になれば幸いです。
内野の守備や走塁についても宮本氏は動画でポイントを配信しています。
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では。
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