バスケットボールやバレーボール、ハンドボールなど。
ジャンプやダッシュ、ストップ動作を繰り返すスポーツをしている。
そのような方で「膝のお皿」あたりの痛みがある方はいませんか?
難治性になる恐れもある「ジャンパー膝」かもしれません。
今回、スポーツ医学検定公式テキストをもとに「ジャンパー膝」をご紹介。
ぜひご一読ください。
ジャンパー膝とは
ランニングやジャンプ動作が多いスポーツで発生しやすく、繰り返しや過度の運動負荷がかかることで膝蓋腱が膝蓋骨に付着する部位で痛みを生じる。
大腿四頭筋の柔軟性が低下した状態で発生しやすく、運動量の調整や大腿四頭筋ストレッチなどの保存療法で改善することが多い。
症状がひどくなると痛みで運動ができなくなり、難治性となることもあるため、早期に治療を開始することが望ましい。
ジャンパー膝の受傷機転
バスケットボール、バレーボール、ハンドボールなどのジャンプ、ダッシュ、ストップ動作を繰り返すスポーツで多く発生する。
動作時に大腿四頭筋が収縮すると、その力は膝蓋骨、膝蓋腱を経由して脛骨に伝わる。
その際、膝蓋腱の膝蓋骨付着部に加わる力負荷が、運動により繰り返されることで腱の微小な損傷を起こし痛みを生じる。
バレーボールではジャンプ踏切時の股関節の屈曲角度が浅く、身体重心に後方偏位があると膝蓋腱に負荷がかかりやすい。
ジャンパー膝の予防
大腿四頭筋のタイトネスがあると膝蓋腱にかかる負荷も大きくなる。
そのため、普段から股関節周囲や大腿部のストレッチを行うことが大切である。
身長が伸びている時期や運動負荷が増加する時期は、特に注意してストレッチを行いたい。
ジャンパー膝の症状
ランニングやジャンプで膝蓋骨直下(膝蓋腱の膝蓋骨付着部)に痛みを生じ、同部に圧痛が出る。
初期は運動後に痛みが出る程度だが、悪化すると運動中にも痛みが生じスポーツ活動が行えなくなる。
ジャンパー膝の検査・診断
通常、X線検査で異常はなく、MRI検査や超音波検査で炎症が捉えられることもある。
大腿部のタイトネスはうつ伏せで膝を曲げた時の踵と臀部の距離で判断することができる。
この距離が大きいほど大腿四頭筋のタイトネスがあり、柔軟性が低下していることを示す。
重症度 | 症状 |
Phase 1 | 運動後に痛みが出る |
Phase 2 | 運動中に痛みが出る |
Phase 3 | スポーツ活動に支障あり |
ジャンパー膝の治療・復帰の流れ
保存療法が基本であり、ランニングやジャンプなどの運動量の調整が必要である。
痛みがひどい場合にはランニングを中止し、RICE処置を行い、痛みが出る動作は控える。
アスレチックリハビリテーションとして、
などを痛みの状態に応じて行っていく。
コンディションが不良な状態で運動を再開すると容易に再発するため、しっかりとコンディションを改善させてから段階的に競技に復帰していく。
また、大腿四頭筋のうち、最も強大な筋力を発揮する大腿直筋は膝関節と股関節をまたぐ二関節筋であり、骨盤が後傾すると大腿四頭筋の緊張が増加する。
そのため、骨盤が後傾しない動作を習得する必要がある。
正しいスクワット姿勢が習得できれば、ジャンプ踏切や着地時の重心の位置や重心移動など、動きの中での動作も確認していく。
症状がひどくなってからでは、復帰までの期間も長くなるため、痛みが軽いうちに運動量を調整し、治療に取り組みたい。
また、体外衝撃波で痛みの神経終末を除去する治療や、炎症を抑えるために膝蓋腱の膝蓋骨付着後面へのヒアルロン酸注射の有効性も報告されている。
ステロイドの注射は強力に炎症を抑えるが、腱組織へのダメージもあるため、頻回に行うと腱断裂を招く危険性がある。
難治性の場合、炎症が生じて増生した血管をカテーテル治療で塞栓し、炎症を抑えることで痛みを改善させる治療も行われている。
おわりに
最後にまとめます。
・ランニングやジャンプ動作が多いスポーツで発生
・繰り返しや過度の運動負荷→膝蓋骨直下に痛み
・大腿四頭筋の柔軟性が低下した状態で発生しやすく、運動量の調整や大腿四頭筋ストレッチなどの保存療法で改善することが多い。
症状がひどくなると痛みで運動ができなくなり、難治性となることもあるため、早期に治療を開始することが望ましい。
・大腿四頭筋の柔軟性低下→膝蓋腱にかかる負荷大
→普段から股関節周囲や大腿部のストレッチを行う
・成長期や運動負荷が増加する時期→特にストレッチを
・ランニングやジャンプで膝蓋骨直下に痛み&同部に圧痛
・初期は運動後に痛み
→悪化すると運動中にも痛み
→スポーツが困難に
・通常、X線検査で異常(−)、MRI検査や超音波検査で炎症(±)
・踵骨臀部間距離が大きい→大腿四頭筋の柔軟性低下
重症度 | 症状 |
Phase 1 | 運動後に痛みが出る |
Phase 2 | 運動中に痛みが出る |
Phase 3 | スポーツ活動に支障あり |
・保存療法が基本
→ランニングやジャンプ等の運動量の調整
・痛みがひどい場合
→ランニング中止&RICE処置&痛みが出る動作は控える
・症状が悪化すると復帰まで長期化
→軽度の痛みのうちに、運動量調整&治療が必要
・その他の治療は以下。
①体外衝撃波治療(痛みの神経終末を除去)
②膝蓋腱の膝蓋骨付着後面へヒアルロン酸注射(炎症抑制)
③ステロイド注射(強力な炎症抑制→腱へダメージ(+)→頻回は腱断裂の危険性)
④難治性→カテーテル治療(炎症で増生した血管を塞栓→炎症抑制→痛み改善)
・不良なコンディションで運動再開
→容易に再発
→コンディション改善&段階的な競技復帰が必要
・リハビリは痛みに応じて以下等を行う
①大腿四頭筋のストレッチ
②膝蓋骨を上下左右に動かす
③適切な下肢アライメントでのスクワット
→骨盤後傾(大腿直筋が過緊張)しないようにする
④正しいスクワット習得後、ジャンプ踏切・着地時の重心の位置や重心移動など動作確認
以上、
スポーツ医学検定 公式テキスト 1級 [ 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構 ]の「ジャンパー膝」からの引用でした。
なおスポーツ医学検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。
読者の健康で楽しいスポーツの一助になれば幸いです。
では。
・大腿四頭筋のストレッチ
・膝蓋骨を上下左右に動かす
・適切な下肢アライメントでのスクワット動作