健康や美容目的で行われることが増えたウォーキングやランニング。
それらの運動につきまとう問題が足首の痛み。
その対処法にはアキレス腱伸ばしが一般的には紹介されます。
しかし、それだけでは効果を実感しにくい方も多いと思います。
今回は足首の関節の遊びを動かす「モビライゼーション」という対処法をご紹介します。
要領をつかめば、簡単かつ短時間に効果を実感することが可能です。
足首に痛みがでる原因とともに、ぜひご一読ください。
なぜウォーキングやランニングでふくらはぎや足首は痛くなる?
地面に接する足は一番はじめに衝突を受け止めます。
そして、地面からの跳ね返りの力をその上にある脚や体に効率よく伝え、次の動きにいかしています。
その働きに一役買っているのが筋肉です。
まず、「立つ」「歩く」、それぞれの場面での筋肉の活動をみてみましょう。
立っているときに働く足の筋肉
足の筋肉 | 働きの重要度 |
ヒラメ筋 | ++++ |
腓腹筋内側頭 | ++ |
母趾外転筋 | ++ |
腓腹筋外側頭 | + |
長趾屈筋 | + |
後脛骨筋 | + |
大腿二頭筋短頭 | + |
中殿筋 | + |
大腿二頭筋長頭 | ± |
大殿筋 | ± |
小趾外転筋 | ± |
上の表は立っているときの働きの重要度を+の数で表しています。
++++~+と上位にあるヒラメ筋と腓腹筋はふくらはぎの筋肉で、脛の骨からかかとにかけて走行しています。
+である長趾屈筋と後脛骨筋も、脛から足先の骨まで走行しています。
その他、++の母趾外転筋はかかとから足の親指の骨まで走行。
大腿二頭筋はもも裏の筋肉、中殿筋と大殿筋はお尻の筋肉です。
つまり、立っているときは足首をまたぐ筋肉が重要な働きをしていることが分かります。
歩くときに働く筋肉
歩くとき足は、「地面に立って支えている」ときと、「地面から離れて振り出されている」ときに分けられます。
歩く際、足の筋肉は機能的にみると、
という3つの働きをしています。
股関節の内転筋や外転筋(中殿筋など)は「地面に立って支えている」ときの初期と終期に活動しています。
それは、骨盤の安定性に寄与していると言えます。
ももの前面(大腿四頭筋など)と裏面(大腿二頭筋など)についている筋肉は、いずれも「地面に立って支えている」ときから「地面から離れて振り出されている」ときへの変換期に働きます。
「地面から離れて振り出されている」ときにおける足の振り子運動を減速して運動の向きを変えています。
また、同時に活動することによって股関節や膝関節の安定性を保持しています。
脛の前面にある筋肉は、「地面から離れて振り出されている」ときにつま先が地面につまずかないように働きます。
また、「地面に立って支えている」ときから「地面から離れて振り出されている」ときへの変換期につよく働いて、つま先の向きを調節します。
かかとの安定した地面への接地を作り出しています。
ふくらはぎの筋肉(ヒラメ筋、腓腹筋、後脛骨筋、長趾屈筋など)は「地面に立って支えている」とき全般、とくに終盤に強く活動しています。
これはつま先が上がるのを防止し、かかとからつま先に重心を移動させます。
また、地面からの反作用によって、強く蹴り出して足が「地面から離れて振り出されている」ときへ移行するのに役立っています。
背筋を伸ばす筋肉は歩いている間、終始働き、慣性と重力によって体が前のめりになるのを防ぎ、同時に左右への動揺も抑制しています。
これらの反応は無意識下で、感覚情報をもとに状況に応じて各筋肉が協調して働いています。
つまり、歩いている間は全身の筋肉が働いていますが、特に足首をまたぐ脛やふくらはぎの筋肉が強く働いていることがわかります。
走るときに働く筋肉
「歩く」と「走る」には、
・両足が地面を離れ、体が空中を跳んでいる時期がある
・両足とも地面に接している時期がない
という2つの特徴的な違いがあります。
そして、足の地面へのつき方は走る速さによって変わります。
短距離走のような速い走りでは、足裏の小指側から接地し、かかとが接地することはなくそのまま蹴り出します。
長距離走のようなゆっくりとした走りでは足裏全体で接地します。
さらに遅い走りでは、歩きと同じようにかかとから接地します。
足が接地した直後は体重の2倍、足が接地する時期の中期には2.5~3倍の力が地面から跳ね返っています。
ここまでの解説は基礎運動学を主に参考にしています。
当然、「歩く」とき以上の負担が足首をまたぐ筋肉にかかってきます。
そういう意味では、靴選びもとても重要ですね。
ウォーキングやランニングで疲れたふくらはぎや足首への対処法「モビライゼーション」
過負荷な運動などによって筋肉が疲労し、硬くなるとスムーズな足首の動きができず痛みがでることも考えられます。
対処法としては、アキレス腱のストレッチなどが有名です。
しかし、それだけでは改善が実感しにくい方も多いと思います。
足首と言われる場所ですが、
・一般的にかかとと言われる踵骨
・その上に乗っている距骨
・そのまた上にある脛骨と腓骨
という4つの骨の関節によって構成されています。
その足首の関節の遊びを動かす「モビライゼーション」を行うと、
・ふくらはぎなど足首をまたぐ筋肉が柔らかくなる
・関節の動きがスムーズになる
・痛みがやわらぐ
ことが短時間で期待できます。
筋肉の疲労は押されたときの痛みで確認できます。
今回の方法を実施する前後でふくらはぎを押さえた際の痛みの程度やアキレス腱のストレッチ感や伸びを確認するとよいでしょう。
足首の関節の遊びを動かすモビライゼーション
ポイントは、
「距骨をつまんで固定」
「かかとをこねくり回す」
という2点。
ポイントをつかんで慣れてしまえば、1分くらいで足首のメンテナンスができるようになります。
では、具体的な方法を解説していきます。
距骨をつまんで固定
距骨はかかとの骨「踵骨」の上に位置しています。
距骨をつまむためには、まず、
①脛骨のでっぱりである内果と、腓骨のでっぱりである外果を押さえる
②そこから2~3cmほど足裏の方向へ手の位置を移動させる
その位置に感じるゴツゴツしたものが距骨になります。
左の足首を動かす場合は、左手で距骨をつまみます。
内側を親指で、外側を他の指で固定します。
かかとをこねくり回す
距骨をつまんでいる反対の手の平はかかとを覆います。
距骨を固定しながら、かかとを覆ったその手でこねくり回します。
グリグリと何回かこねくり回し、ふくらはぎを押さえた際の痛み具合を確認していきます。
ある程度痛みがやわらいだら、アキレス腱のストレッチや体重をかけた際の痛みで、足首の具合を確認してみましょう。
おわりに
最後にまとめます。
・「立つ」「歩く」「走る」ともに、ふくらはぎなど足首をまたぐ筋肉の負担が大きい
・その筋肉が疲労すると痛みがでる
・その足首の関節の遊びを動かすと痛みがやわらぐ
足首の関節の遊びを動かすモビライゼーションの方法は、
①距骨をつまんで固定
②反対の手でかかとをこねくり回す
要領をつかめば、アキレス腱伸ばしより、短時間で簡単に効果を出すことができます。
肩こりや腰痛で悩んでいる方は以下の記事もご覧ください。
今回の記事が、読者の皆さんの健康で豊かな生活の一助になれば幸いです。
では。
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