健康のためのウォーキング、何歩歩く必要があるの?

手軽に始められる運動の代表、ウォーキング。

その目的は「健康になるため」という方は多いと思います。

では実際、ウォーキングで健康になるためには、何歩歩く必要があるのでしょうか?

今回は、東京都健康長寿センターが公表している中之条研究というものをご紹介します。

この研究では、1日の歩数によって起こりうる病気や病態を細かく列挙しています。

しかし実は健康のためには、単に歩数だけを考えればよい訳ではないようです…。

ぜひご一読ください。

中之条研究からわかる1日の歩数と起こりうる病気

1日の歩数と起こりうる病気

ネットでウォーキングと検索すると目にする「20分間の速歩き&1​日8,000歩」。

これは、東京都健康長寿センターの青栁幸利という方が長年の研究結果から導き出し、「やってはいけないウォーキング」という本を出版などして有名になった数値です。

群馬県の中之条町で行われた研究のため、中之条研究と言われています。

 

この研究では、1日の歩数を細かく分け、起こりうる病気を以下のように列挙しています。

歩数中強度の活動時間予防(改善)できる可能性のある病気・病態
2,0000分寝たきり
4,0005分うつ病
5,0007.5分要介護・要支援、認知症、心疾患、脳卒中
7,00015分がん、骨粗しょう症、動脈硬化、骨折
7,50017.5分筋減少症、体力の低下
8,00020分高血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム(75歳以上)
9,00025分高血圧(正常高値血圧)、高血糖
10,00030分メタボリックシンドローム(75歳未満)
12,00040分肥満

一方、厚労省の調査による日本人の平均歩数は以下の通りです。

歩数の平均値は男性で 6,793 歩、女性で 5,832 歩

20~64 歳の歩数は、男性 7,864 歩、女性6,685 歩であり、65 歳以上では男性 5,396 歩、女性 4,656 歩である。

厚労省 令和元年度 国民健康・栄養調査より

見比べてみると、なかなかショッキングな内容だと思います。

では実際のところどんな研究で、どういう根拠でそのようなことを述べているのでしょうか?

 

研究の内容

中之条研究

研究は、日常の身体活動と病気予防の関係についての調査を目的にされています。

いつ頃、どこで、誰が対象に行われた?

群馬県中之条町の65歳以上の全住民である5000人を対象に、2000年以降継続的に実施されています(現在も継続中)。

なお、認知症や寝たきりの人は対象者から除かれています。

どうやって行われた?

対象者全員に日常の運動頻度や時間、生活の自立度、睡眠時間、食生活などに関する膨大なアンケート調査を実施。

その内2000人に対しては、詳細な血液検査や遺伝子解析が行われました。

さらに、その内の500人に対しては、身体活動計(歩数と速歩き時間を計測)を携帯してもらい、1日24時間、1年365日の身体活動状況をモニターする、というものです。

 

研究の結果と、そこから述べられていること

その結果、前述した表のように、1日の歩数と中強度の活動時間によって、起こりうる病気や病態がみえてきたそうです。

歩数中強度の活動時間予防(改善)できる可能性のある病気・病態
2,0000分寝たきり
4,0005分うつ病
5,0007.5分要介護・要支援、認知症、心疾患、脳卒中
7,00015分がん、骨粗しょう症、動脈硬化、骨折
7,50017.5分筋減少症、体力の低下
8,00020分高血圧症、糖尿病、脂質異常症、メタボリックシンドローム(75歳以上)
9,00025分高血圧(正常高値血圧)、高血糖
10,00030分メタボリックシンドローム(75歳未満)
12,00040分肥満

 

しかしなぜ、このような病気や病態になると歩数によって言えるのでしょうか?

中之条町で骨粗しょう症になった人の身体活動の実態を調べたところ、骨粗しょう症になった人の9割以上は「7000歩・中強度の運動15分未満」で、「7000歩・中強度の運動15分以上」の人は数えるほどしかいなかった。

https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/16/072000046/121200009/

引用にあるように、長年にわたり対象者の歩数や健康状態を追跡した研究だからこそ、表のような結果を導き出せたと言えます。

 

「中強度の活動時間」とは?メッツで運動や活動の強度を3段階に

中強度の活動時間とは?

この研究では、表に「中強度の活動時間」とあるように単に歩く(歩数)だけでは十分ではなく、歩く質(強度)も重要であることが述べられています。

この研究では、運動や身体活動の強度を「低」「中」「高」の3段階に分けて考察されています。

その強度は、以下のようにメッツで分けられています。

・「低」→0~3メッツ未満

・「中」→3~6メッツ未満

・「強」→6メッツ以上

下の関連記事でも述べていますが、通常の歩行は3メッツですが、速歩きの速さによって、3.5~5メッツとなります。

また、「家の中の歩行」や「ゆっくり歩く」といったゆったりとした歩行は3メッツ未満に分類され、中強度の活動にはなりません。

 

「中強度の活動時間」の具体例

中強度の活動、つまり3~6メッツの活動の一部は以下のようなものがあります。

・通勤に自転車にのる

・階段の上り下り

・Wii Fit、リングフィットなどテレビゲーム

・腕立て伏せ、腹筋運動、懸垂、スクワットなどほどほどの運動

・釣り

・ほどほどの労力を要するガーデニング

・ほどほどの労力を要する掃除や台所仕事、洗濯物干し

・ほどほどの労力で子どもと遊ぶ、世話をする

つまり、普段の何気ない歩数だけでなく、上記のような中強度の活動が健康のためには必要であるということになります。

 

高強度の運動や活動はほどほどに

高強度の運動や活動はほどほどに

この研究では、低強度の運動のみでは健康のためにはならないと述べるだけでなく、高強度の運動のやりすぎにも注意喚起しています。

高強度の活動を行うと、細胞内で活性酸素が比較的多く発生し、遺伝子に傷をつけることがわかっています。

通常、傷ついた遺伝子は修復されますが、それが間に合わないと、糖尿病や認知症、がんなどの重い病気になる可能性が高まります。

https://www.tmghig.jp/research/publication/news/pdf/rj_no265.pdf

生理学的に起きる事象を根拠に、高強度の激しい運動を勧めていません。

運動を習慣にしている人や、旅館の女将さんのように屋内での仕事が多い人は、その度が過ぎると、健康を損なうおそれがあることもわかりました

https://www.tmghig.jp/research/publication/news/pdf/rj_no265.pdf

また、実際に高強度の活動が多い対象者の健康状態を長年に追跡した結果からも、根拠づけられています。

生理学的にも「ややきつい」程度の運動が疲労物質の乳酸を過度に蓄積させないうことも分かっています。

 

1万歩以上歩いても効果はあまりない

骨量や筋量、体力全般をよく反映する歩行速度のような心血管系および筋骨格系の機能は、10,000 歩・30 分を超えて活動してもほとんど高まらないようです。

そして、歩数は1万歩以上歩いてもそれ以降の対象者の骨や筋肉、心肺機能は変化がなかったとされています。

健康維持・増進、健康寿命の延伸には、1年の1日平均歩数が8,000歩以上で、その内、その人にとっての中強度活動(速歩きなど)時間が20分以上含まれていることが期待されます。

https://www.tmghig.jp/research/publication/news/pdf/rj_no265.pdf

以上のことから、上の引用のように結論づけられています。

 

おわりに

今回は65歳以上を対象にした研究であり、65歳未満の方には必ずしも当てはまらない部分もあると思われます。

しかも住んでいる環境が違えば、食事や住まい、外気温など生活状況は異なってきます。

 

しかしヒトは年齢が違っても、基本的な構造や機能は変わりありません。

冒頭にあった「20分間の速歩き&1​日8,000歩」を意識して、毎日を過ごすことで健康な人生を送ることができる可能性が高まると言えるのではないでしょうか。

 

最後にまとめます。

健康のためにウォーキングをするなら

・1日8,000歩&20分以上の中強度の活動を行う

・高強度の運動や活動はほとほどに

(中等度の活動は、家事や子育てに追われているなら済んでいるかも)

とてもシンプルですね。

普段の生活に「ウォーキング」と言わないまでも、「歩く」ことを意識して増やしてみてはいかがでしょう?

その意識の有無が長年つもりにつもると、「健康」の損失という大きな人生の差を生むかもしれません…。

 

我ながら何と恐ろしいシメでしょうか…(笑)

何はともあれ、今回の記事が読者の皆さんの豊かなLifeの一助になれば幸いです。

では。