『子どもは褒めて育てるもの』『怒られて育つと自己肯定感が低い子に』
理想は知ってるけど、中々言うことを聞いてくれない我が子を怒ってしまう…。
子育ての理想と現実のギャップに苦しむ親御さんは多いのではないでしょうか?
褒めるには、心理学者バンデューラが提唱した理論を使って、子どもが「出来た!」となる状況を作るための下準備が有効です。
ポイントは、
・その課題における子どもの自己効力感がどうか?
・その課題における子どもの報酬期待感はどうか?
ということです。
今回はその自己効力感について、
心理学などをベースにリハビリを提供する作業療法士である私がご紹介します。
3分ほど読めば、上手にお子さんを褒められるようになる可能性がありますので、ぜひご一読ください。
自己効力感とは
自己効力感(じここうりょくかん)という言葉をご存知ですか?
カナダ人の心理学者であるバンデューラが提唱した自己統制理論の中の概念で、セルフエフィカシーとも言われています。
ヒトの行動は、「自己効力感」と「報酬期待感」の掛け合わせで説明できると言われています。
「自己効力感」とは、ある課題における自身の能力や可能性に対する認識のことです。
また、「報酬期待感」とは、その課題を行った結果に対する予測のことです。
難しくと感じる方も多いと思うので、ここからは実例を挙げながら説明していこうと思います。
足が速くなって欲しいとあるお父さん
今回は例として、子どもに対して「足が速くなること」を期待しているお父さんがいたとします。
我が子には足が速くなって欲しい!
しかし、どんなに子どもに頭ごなしに走り方を教えたり、「とにかく走れ!!」と無理やり走らせても、子どもは走り出す訳ではありません。
そのようなことをしたら子どもは、
走ることが嫌いになる
↓
走る機会が減る
↓
足は速くならない
という負のループに陥る可能性があります。
まずは、子どもには自発的に走ることを楽しんで欲しいですよね。
自己効力感の理論の実践例~走ることを楽しんでもらう~
ここで自己効力感の理論を使って、自発的に子どもに走ってもらう方法を考えたいと思います。
親として走ることをしてもらいたい場合、その子の走ることに対する自己効力感にあわせて、走ることによる子どもにとっての報酬期待感を考える必要があります。
その子にとって何が報酬になるかは、その子の性格によります。
ここでは、例として「カッコよくなれる」ことを子どもの報酬とし、親が子どもに走るように言葉をかけるとします。
自己効力感と報酬期待感のケース別の方法論
以下のような、A君、B君、C君、D君、それぞれのケースで説明します。
報酬期待感 | 報酬期待感 | ||
高 | 低 | ||
自己効力感 | 高 | A君 走ることが得意に感じており、 (自己効力感⇒高) 走ることでカッコよくなれると思っている。(報酬期待⇒高) | B君 走ることが得意に感じているが、 (自己効力感⇒高) 走ることでカッコよくなれるとは思っていない。(報酬期待⇒低) |
自己効力感 | 低 | C君 走ることは苦手に感じているが、 (自己効力感⇒低) 走ることでカッコよくなれると思っている。(報酬期待⇒高) | D君 走ることが苦手に感じているが、 (自己効力感⇒低) 走ることでカッコよくなれるとは思っていない。(報酬期待⇒低) |
実例① 自己効力感「高」×報酬期待感「高」 A君のケース
図の左上の子がA君です。
「走ること」が得意で、自己効力感が高いと言えます。
また「走ること」による「カッコよくなれる」報酬への期待が高いです。
そのため、カッコよくなれるよ!と走ることを親が提案すると、楽しんで走ってくれる可能性が高いですね。
ウサイン・ボルトみたいに速くてカッコよくなりたい!
実例② 自己効力感「高」×報酬期待感「低」 B君のケース
図の右上の子がB君です。
「走ること」が得意で、自己効力感が高いと言えます。
しかし、「走ること」による「カッコよくなれる」報酬への期待が低いです。
そのため、親が走ることを提案しても走ってくれない可能性が高いです。
そこで、B君に走ってもらうためには、「走ること」への報酬を変える必要があります。
B君が好きで、興味のある報酬に変えて提案してみましょう。
「運動会で一番になれたらゲームを買ってあげる」
「運動会で一番になれるかもよ」
「〇〇ちゃんから好かれるかもよ」
「もっと走って速くなると、試合に出られるかもよ。」
そうして、B君の「走ること」への報酬の期待を高くすることが出来れば、
提案に応じて、楽しんで走ってくれるかもしれません。
走るのだるいけど、ゲーム買ってくれるってんなら話は別だぜ!
ただ、このケースは内的なモチベーション(内的動機づけ)ではなく、外的なモチベーションになってしまいますので注意が必要です。
内的・外的動機づけを知りたい方はこちらをどうぞ。→自己効力感~子どもが夢中になる「内的動機づけ」とは?~
実例③ 自己効力感「低」×報酬期待感「高」 C君のケース
図の左下の子がC君です。
「走ること」が苦手で、自己効力感が低いと言えます。
一方、「走ること」で「カッコよくなれる」という報酬への期待は高いですね。
しかし、「走ること」は苦手なため、親が単純に走ることを提案しても、走ってくれない可能性が高いです。
そこで、苦手な「走ること」という提案のハードルを下げてみましょう。
「(走る要素が入るようにしながら)一緒に風船遊びをしよう」
「(速く走るヒントが流れる)面白い動画をみつけたよ。一緒にみてみよう」
「(走っているC君の好きなキャラクターや選手の)マネを一緒にしてみよう」
「何秒以内で〇〇してね!ヨーイドン!」
模擬的にではありますが、走る機会を作ることで、結果的に苦手意識が少なくなり、楽しんで走ってくれるようになるかもしれません。
走るのは苦手だけど、風船遊びなら楽しいから大好き!
実例④ 自己効力感「低」×報酬期待感「低」 D君のケース
図の右下の子がD君です。
「走ること」が苦手で、自己効力感が低いです。
また、「走ること」で「カッコよくなる」報酬への期待も低いです。
こうしたケースはB君、C君への提案方法の工夫を取り入れると、楽しんで走ってくれるかもしれません。
おわりに
いかがでしたか?
今回は例として「走ること」を挙げましたが、学習や生活習慣など何にでも応用できると思います。
ポイントは、お子さんのその課題に対する自己効力感と報酬期待感はどうかという視点です。
走ることに関してはA君タイプでも、学習に関してはB君タイプになるお子さんもいるでしょう。
そのあたりに難しさを感じた方は以下の記事にコツを綴っています。
自己効力感の生みの親バンデューラが挙げるポイント4つを子育てに
今回の記事で自己効力感の視点での子育てを実践され、親子で喜びあうことが増え、豊かな子育ての一助になれば幸いです。
では。
上手に褒めて育てる方法はないものかしら…?