「自己効力感」と「報酬期待感」の掛け合わせを考えることで、ヒトの行動は変わる。
そうした心理学の自己統制理論を提唱した人物であるバンデューラ。
バンデューラは、その他にどのようなことを述べているのか?
バンデューラは、自己効力感について4つのポイントを述べています。
今回はそのポイント4つについて、
心理学などをベースにリハビリを提供する作業療法士である私がご紹介します。
3分ほど読めば、4つのポイントを活かした「褒める子育て」への一助になりますので、ぜひご一読下さい。
子育ての実例を通して、バンデューラのポイント4つの理解が深まり実践できる
子どもの「出来た!」が引き出せ、褒めながら親子で楽しく過ごすことができる
自己効力感と報酬期待感について、詳しく知りたい方は、褒める子育て!子どもの成功体験につながる心理学の「自己効力感」をご覧ください。
バンデューラのポイント4つ
バンデューラは、自己効力感を高めるポイントとして以下の4つを挙げています。
・成功体験
・モデリング
・言語的説明・暗示
・情緒的安定
一つ一つを詳しく子育てに例えて述べていきます。
成功体験
まずは成功体験です。
一度「できた!」という体験は、「次もできるかも!」という気持ちにさせます。
ここで例えば、サッカーをしてもらいたい親がいて、そのお子さんが苦手だった「ボールを蹴る」ことを、好きにさせることに成功したとします。
成功体験の積み重ねが自己効力感を高める
そこで、次に親が早速サッカー教室に連れて行ったとします。
しかし、そこで再び「できた!」「楽しかった!」という経験をできるかは不透明と言えます。
なぜなら、サッカー教室になると、
・他の生徒とのレベルの違い
・他の生徒や先生との相性といった人間関係の難しさ
・ボールが固い、大きいなどの質の違い
・プレイする状況の判断の難しさ
など、大きな環境変化にお子さんは晒されることになります。
自己効力感を子育てに使うためのポイントと実例で述べさせてもらった、
- 「子どもの好きなこと」「親のして欲しいこと」の深掘り
- 子どもにとっての「親のして欲しいこと」に対する「自己効力感」と「報酬期待感」を分析
- 「親のして欲しいこと」を段階づけて、難しさを調整
といった部分で、お子さんのココロとカラダの部分で考慮すべき段階を少し飛躍していると言えます。
良かれと思って連れて行ったサッカー教室で、
「できなかった」「楽しくなかった」という失敗体験
↓
「ボールを蹴ると楽しい!」という報酬期待感が弱まる
↓
「サッカー嫌い!」とサッカーから離れる
ということになるかもしれません。
お子さんのカラダとココロに合った難しさの課題の提供で、
子どもの「できた!」「楽しかった!」という成功体験
↓
「次もできるかも!」「次もしてみたい!」という報酬期待感が強まる
↓
サッカーに対する自己効力感が高まり、サッカーが好きになる
という小さな成功体験の「点」を、目的につながる「線」に向かって積み重ね、子どもの自己効力感を高めていくことが重要と言えます。
サッカー教室という選択肢は、その「線」の先に入ってくるかもしれません。
逆に、そうした配慮をされている教室であれは成功する可能性が高いのではないでしょうか。
そういう意味では、親がそうした視点で見学に行き、お子さんに合った教室を探してあげるということが重要かもしれません。
モデリング
子どもにとって近い存在の人が「モデル」になって、うまくやっているのを見たり聞いたりすることで、「自分にも出来そう!」と思うことです。
イメージできないことは、自己効力感は高まらず実践できない
子どもにして欲しいことがあって、それをいきなり要求し、してもらうというのは難しいですよね。
ヒトは「イメージできない動き」というのは、実践できないものです。
野球という文化がない国の子どもに、バットを持たせて「打って」と言ってもおそらくできないですよね。
子どもにとって身近な誰かがその動きをしている状況や映像をみることで、子ども自身がその動きをしているところをイメージし、マネをしながら、「これならできるかも!」という状況が生まれます。
例えば、体操の内村航平選手は、中学生の頃、コバチという技をしたくて、ビデオテープがすり切れるほどにその技をする選手の映像を何度もみて、動きを手ぶりでマネしながらイメージを高めていたら、翌日には実際にできるようになたというエピソードがあります。
親のして欲しいことを子どもにしてもらうためには、
①あなた自身がモデルになる動きをする、または映像で子どもが興味のあるモデルを提示する
②子どもの頭の中で動きのイメージを作らせる
③子どもにマネしてもらいながら「これならできるかも!」と思わせる
と、モデリングを使って自己効力感を高めることが出来ます。
そういう意味では、現代はプロの選手のプレイやトレーニング動画、知育動画などがあふれていますので、活用しない手はないですよね。
言語的説明・暗示
簡単に言うと「あなたなら大丈夫」「やればできる」と勇気づけられると、できる気がしてくることです。
親が言葉かけで自己効力感を高められるか
分かりやすく言うと、子どもが憧れる選手や大好きなキャラクターなどからそうした声を掛けられると、子どもはすごくやる気が湧き、自己効力感は高まるはずです。
しかし日常の子育てにおいて考えるとそういう場面はまれで、そばにいる親の役割が大きいですよね。
そうした、子どもを勇気づけ、物事に挑戦させられる言葉をかけられる存在であることが重要です。
そこでも子どもの中の「自己効力感」と「報酬期待感」といった心の機微を読み取るをことしておくと、そうした良い言葉かけにもつながると思います。
子ども自身で勇気づけ、自己効力感を高められるか
ただ、成長するにつれ親から離れる時間も増えてきます。
ここでもう一つ重要なのは、
子ども自身が、その課題となる動きやその過程を「言葉で説明できるか」、子ども自身で「大丈夫と自分に言い聞かせることができるか」ということです。
例えば「バイオリン」を弾くことできる子どもが4人いたとします。
弾き方をAくんは自分なりの言葉で説明できて、Bくんは説明できないとしたら、どうでしょう?
バイオリンはこうして弾くといいんだよ!
バイオリンの弾き方…?よくわかんない。
また、弾くことができるようになるまでの道のりを、Cくんは説明できて、Dくんは説明できないとしたらどうでしょう?
僕は毎日お母さんと一緒に教室に行って、先生と頑張って上手になったんだよ!
どうやって弾けるようになったか…?何となくしてたらできるようになったかな。
BくんやDくんより、AくんやCくんの方が自信をもって課題に取り組めそうではないですか?
次の課題が少し難しく、緊張するような場面であったとしても、Aくん、Cくん自身で「きっと大丈夫」と自分に言い聞かせることができるように思えませんか?
そのために、親御さんにできることは、
①子どもに「できた!」「楽しかった!」という体験の機会や場所をつくる
②その日のうちに「今日はどうだった?」「どうしたら上手にできた?」などと、子どもに問いかける
③「動き」や「できた・楽しかった」を、出来るだけ子ども自身の言葉でふり返ってもらう
ということです。
そうすれば、AくんやCくんのような言語的暗示が出来る自己効力感の高い状態にすることができるかもしれません。
情緒的安定
ある動きをしてもらいたいとき、お子さんの心理状態によってその自己効力感は変わるということです。
いつも一緒の大好きなお父さん・お母さんの前では、ダンスを何度でも自ら披露してくれる。
お母さん、お父さん見て~!!(ダンスふりふり)
しかし、親戚などたくさんの人が見ている前などは、子どもは照れてしてくれないことがありませんか?
ちょっとあのダンスかわいいからみんなに見せてよ~
(モジモジしつつ)絶対いやっ!!
いつもと違う人・場所・時間などは、緊張を生み、「うまくできないかも・・・」という気持ちにさせます。
そのため、そうした場面ではしてくれないことが多いでしょう。
そして、仮に失敗した場合の子どもの自己効力感の低下は大きいものになり、「もうしない!」という親にとって避けたい結果になるかもしれません。
逆に、いつも一緒にいる人・場所などは、安心感を生み、失敗を考えずに実力をスムーズに発揮しやすいです。
そのため、
①子どもが新しいことに挑戦するとき
↓
精神的にリラックスできる人・場所・環境など場面設定をする
②逆に、すでに子どもが自信をつけて、失敗をおそれないくらい習熟した場合
↓
多少緊張する場面でしてもらってもOK
ということが言えます。
おわり
いかがでしたか?
①成功体験
→成功体験が自己効力感を高め、次の成功体験を生む。そのために適度な難しさの調整を。
②モデリング
→身近な存在がモデルとなると自己効力感は高まる。イメージをしっかり膨らませ、マネしてもらう。
③言語的説明・暗示
→周りから「出来る」と励まされること、または自分自身で「出来る」と言い聞かせることが自己効力感を高める。
④情緒的安定
→過度に緊張せず、実力を発揮しやすい環境作りが自己効力感を高める。
4つのポイントを意識して課題に取り組んでいくことで、お子さんの自己効力感は高まり、より成長していけるはずです。
まずは一つだけでも覚えて実践してみましょう。
そして、うまく行かなかったときに、また振り返って見てみると、もしかしたら残りの部分にヒントがあることもあるかもしれません。
まとめて「自己効力感」と「報酬期待感」についても振り返り、自分のものにするとより効果的です。
詳しくは冒頭にも登場している、褒める子育て!子どもの成功体験につながる心理学の「自己効力感」をご覧ください。
自己効力感を脳科学的に裏付けした子育てに活かせる自己効力感を脳科学でひも解くという記事も書いています。
「なるほど!」という内容になってますので、併せて読まれると自己効力感についてより理解が深まり、実践的になれます。
お子さんと「出来た!」「楽しい!」を共有し、親子で喜びあうことが増え、豊かな子育ての一助になれば幸いです。
では。
「褒める子育て」に活かすため、もう少し自己効力感について知りたい。