ウォーキングやランニングをする前に整えるべき膝まわりのこと

健康のために頑張るウォーキングやランニング。

そのウォーキングやランニングには膝の働きは必須です。

それと同時に傷めやすい場所でもあります。

今回は膝を傷めず、健康のため心地よくウォーキングやランニングを行うためのポイントとメンテナンス方法をご紹介します。

ぜひご一読ください。

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝まわりの筋力

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝まわりの筋力

まず、ご自身の筋力がどのくらいあるのかを知る必要があります。

ウォーキング、ランニングともに一歩を踏み出し着地する瞬間は、体重分かそれ以上の衝撃が体に返ってきます。

その衝撃を受け止めつつ、次の一歩を踏み出すための軸の形成が必要になります。

それらの反応はほとんどが無意識下の「感覚~神経~筋肉」のループで実行されていきます。

それらの反応の中で、必ず一定の筋力が必要になります。

詳細は以下の記事をご覧ください。

 

膝を伸ばす筋力の数値WBI

では、筋力はどのようにして測ることができるのでしょうか。

筋力は、本来は器機などによって測定されます。

しかし実は、椅子で簡易的に測ることができます。

それがWBIという筋力の指標の一つです。

WBIの数値によって、体に合った運動が導き出すことができます。

WBIが80以下→日常の活動より高い負荷の運動は怪我の恐れ

WBIが100前後→軽いスポーツ

WBIが130以上→本格的なスポーツ

当然、体に合わない運動をすると怪我をする可能性が高まります。

その中で膝を傷める可能性も出てくる訳です。

ウォーキングかランニングか、ご自身の筋力に合った選択をすることが、膝を傷めず、本来の運動の目的である健康につながります。

WBIについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

ウォーキングとランニング

 

膝をまっすぐ伸ばしたままにできるか~エクステンションラグ~

下にブレないため、エクステンションラグなし

リハビリテーションでは「エクステンションラグ」という指標も活用されています。

椅子に座った状態で、正面の椅子にかかとを置いて脚を一直線にしてみて下さい。

そこから脚は一直線にしたままの意識で、かかとを椅子から外します。

その瞬間に膝から下の足が下に少しでもブレる場合、「エクステンションラグあり」と判断されます。

ブレるため、エクステンションラグあり

 

まっすぐ伸びる膝と伸びにくい膝で起こる大きな違い

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝まわりの筋力。まっすぐ伸びた膝とそうでない膝との違い

膝は本来、ももの骨とすねの骨が一直線になるまで関節には動く範囲があります。

ヒトは立っているとき、膝が一直線であれば骨どうしが体重を支え、安定した状態になります。

その分、筋肉は「体重を支える役割」より足を踏み出すといった「関節を動かす役割」に比重を置くことができます。

しかし、少しでも膝が曲がった状態になると体重は膝を曲げる方向に作用します。

そのため、「体重を支える役割」と「足を動かす役割」を同時進行で行うという非効率な筋肉の活動になります。

 

そういう意味で、エクステンションラグはないに越したことはありません。

また、エクステンションラグのようなブレはなくても、伸ばしたままにする努力感が左右で異なる場合も注意が必要です。

そのエクステンションラグは、筋力がないというだけではなく、柔軟性低下や痛みといった要因も影響します。

膝から先のすねから足にかけての重みは6.5%程度ですので、体重50㎏の方でしたら3.25kgほどです。

その重みを受け止めるだけの力を膝が発揮できない状況でウォーキングやランニングを行うのであれば、それは膝の破壊活動になるかもしれません…。

そうした場合は一旦、運動はお休みしてコンディションを整えることに専念しましょう。

 

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性

前述したようにウォーキングやランニングは、一歩を踏み出し着地する瞬間は、体重分かそれ以上の衝撃が体に返ってきます。

その衝撃をうまく吸収しながら次の動作につなげるために必要な要素が柔軟性になります。

 

また、ウォーキング、ランニングともに膝の関節は大きな動きが求められます。

関節を動かすのは筋肉の伸び縮みの作用です。

そのため、関節が大きく動くためには膝まわりの筋肉や関節の柔軟性が必要になります。

 

背骨

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性。背骨

背骨は、首の背骨「頸椎7個」、胸の背骨「胸椎12個」、腰の背骨「腰椎5個」、骨盤に収まる「仙骨」「尾骨」から成ります。

仙骨、尾骨以外の背骨の間には椎間板というクッションがそれぞれに敷かれています。

各々クッションを挟みながら、首は前に、胸は後ろ、腰は前にS字カーブを描いています。

ウォーキングやランニングで着地をするたび地面から体に跳ね返ってくる衝撃。

それらS字カーブがバネの働きをして衝撃を吸収しながら次の動作を作っています。

そのメカニズムは下の記事に述べています。

背骨のメンテナンス方法は様々ありますが、下の記事の方法が簡単で短時間で効果を実感できますので、本当におすすめです。

 

胸椎

胸の高さ付近の背骨を胸椎と言います。

背骨の中で、胸椎の柔軟性も重要です。

 

胸椎は胸郭を介して、胸や肩の動きにも関与しています。

胸郭とは、背骨の中でも胸の背骨である「胸椎」と「肋骨」、みぞおちの位置にある骨である「胸骨」から構成されています。

地面から返ってくる衝撃を逃がし、次の動きにつなげる役割があります。

ウォーキングやランニングの際に腕が振られる動きは、そうした衝撃を打ち消しつつ、地面をける作用も作っています。

そのため、胸椎や胸郭の柔軟性が低下していると、ウォーキングやランニングのたびに体に返ってくる衝撃を膝でも受け止めることになりかねません。

 

下の記事で胸椎を動かして柔軟性を高める簡単で楽ちんなエクササイズをご紹介しています。

胸椎は、ストレスなど日常生活の中で気づかない内に柔軟性を失いがちです。

ぜひ胸椎の柔軟性も整えてからウォーキングやランニングを行いましょう。

 

股関節

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性。股関節の作用

前述したように立った状態では、膝はまっすぐ一直線だと上下の骨どうしで体重を支え合い、安定しています。

しかし、膝が少しでも曲がった状態では重力によって膝が折れる作用が常にかかります。

主に膝を伸ばす筋肉が、それ以上膝が折れないように支える役割を担うことになります。

しかし、股関節の筋肉も同様にその役割を担うことができます。

股関節を起点に、ももが体に対して前に位置した状態から、体とまっすぐした位置へ戻った場合を考えます。

すると、膝は折れた状態からまっすぐ伸びる方向へ作用します。

つまり、股関節の後面にある筋肉は膝を安定させる作用があると言えます。

それらの筋肉は殿筋群といったお尻の筋肉や内ももの筋肉である大内転筋、もも裏の筋肉などが挙げられます。

それらの筋肉をしっかりと働かせるためには、

・股関節まわりの筋肉の柔軟性

・関節の動きの幅

を作っておく必要があります。

上の動画の1:29、10:53、20:13あたりはお尻の筋肉のストレッチになります。

理学療法士が様々なストレッチをYou Tubeで分かりやすく紹介している動画です。

またその他、股関節の硬さによって難易度別でストレッチが紹介されています。

上の動画のストレッチが難しい方はそちらを試してみても良いでしょう。

 

ハムストリングス

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性、ハムストリングス。

ハムストリングスとはもも裏の筋肉のことです。

以下の記事でも述べていますが、ウォーキングやランニングの際にももの前面の筋肉と協調して重要な働きをしています。

・足の振り子運動を減速して運動の向きを変える

・同時に活動し、股関節や膝関節の安定性を保持

といった働きが挙げられます。

 

ハムストリングスの柔軟性は、一般的に前屈で測ることが多いです。

前屈はザックリとした評価ですが、手軽に実施できる点がメリットです。

下の記事で紹介している手軽かつ簡単な運動を行うだけで、前屈が楽に伸びるようになります。

つまり、ハムストリングスの柔軟性が高まったと言えます。

ハムストリングスが柔軟だと、脚が前に出やすくなります。

心地よいウォーキングやランニングのために必須の柔軟性と言えます。

 

下腿内旋筋群

膝は基本的に屈伸の運動ですが、その際に少しねじれの動きが伴います。

膝が伸びきる際には、ももの骨である大腿骨に対して脛の骨である脛骨が外にねじれます(外旋)。

また、膝が伸びきった位置から曲がる際には、大腿骨に対して脛骨は内にねじれます(内旋)。

膝が伸びる→外旋(脛骨が大腿骨に対し)

膝が曲がる→内旋(脛骨が大腿骨に対し)

つまり、膝が伸びにくい場合、下腿内旋筋群が硬く、下腿外旋が起きにくくなっているという可能性があります。

 

エクステンションラグの項で前述したように、膝が伸びきらないと立っているとき、骨どうしで支えられず、膝が折れる作用が働きます。

すると、膝まわりの筋肉が「体重を支える役割」と「足を動かす役割」を同時進行で行うという非効率な筋肉の活動になります。

心地よく、かつ怪我なくウォーキングやランニングをするためには、下腿内旋筋群の柔軟性を確保しておく必要がある訳です。

 

そして、下腿の内旋に関与する筋肉は、

・半腱様筋

・半膜様筋

・縫工筋

・薄筋

・膝窩筋

となっています。

半腱様筋と半膜様筋はもも裏の筋肉であり、ハムストリングスの仲間になります。

ですので、前述のハムストリングスの柔軟性を高める運動でメンテナンスが可能です。

 

個人的な印象ですが、膝の調子が悪い方は「縫工筋」の筋疲労があるケースが一定数みられます。

今回は、縫工筋のメンテナンス方法をご紹介します。

 

縫工筋のメンテナンス方法

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性。縫工筋。

縫工筋は、上前腸骨棘から脛骨上部内側面にかけて走行しています。

下の写真のように、体の前にある骨盤のでっぱりから、膝裏の内側まで走っているイメージになります。

縫工筋の走行

その走行にそって、マッサージします。

基本的に、筋疲労があるときは押さえると痛みがあります。

心地よい程度のマッサージを縫工筋の走行にそって行います。

マッサージが終わったら、エクステンションラグのチェックで膝から先の止まり具合や、重さの具合を確認してみましょう。

きっと、縫工筋の柔軟性が高まり、膝が伸びる際の脛骨が外旋しやすくなり、軽くなっているはずです。

 

足首

ウォーキングやランニングをする上で整えておくべき膝に関わる部位の柔軟性。足首。

足首は地面とはじめに接地する足部と、その上にある脚や体をつなぐ場所です。

その地面は整地された場所ばかりではなく、デコボコや傾斜地など様々です。

そのデコボコや傾斜地に合わせながら、脚や体を垂直に保ちながら次の足を前に運ぶ。

そうしたバランスをとるため、色々な方向の傾きにはじめに柔軟に対処するのが足首になります。

 

仮にその足首の柔軟性が低下した状態で、ウォーキングやランニングを行うとなることを想像してみましょう。

デコボコ・傾斜のある地面から体に向けられる色々な方向の傾きへの対処に、進むたびに膝に強いられることになります。

そのため、足首には柔軟性が必須になります。

下の記事で、そうした柔軟な足首を作るメンテナンス方法をご紹介しています。

柔軟性のある足首を作り、膝の負担が少ない心地よいウォーキングやランニングを楽しみましょう。

 

おわりに

今回は、ウォーキングやランニングを行う前にチェックすべき膝の筋力と部位別の柔軟性のお話しでした。

最後にまとめます。

チェックすべき筋力

・WBIで自身の筋力にあった運動を知る

・エクステンションラグで左右差をみる

チェックすべき柔軟性

・背骨

・胸椎

・股関節

・ハムストリングス

・膝関節内旋筋群(縫工筋)

・足首

ウォーキングやランニングは、膝の曲げ伸ばしを伴う重力下での全身運動です。

全身の筋力や柔軟性が必要になります。

ご自身の筋力にあった運動を行う前に、筋力の左右差やそれぞれの柔軟性を整えましょう。

それはあなたの心地よいウォーキングやランニングにつながり、健康で豊かな生活の一助になることでしょう。

では。

今回の記事は

基礎運動学第6版 [ 中村隆一(リハビリテーション) ]

を主に参考にしています。