ランニングで膝が痛んだら鵞足炎や腸脛靭帯炎かも〜スポーツ医学検定より〜

長距離ランナーの膝の痛み。

それは鵞足炎や腸脛靭帯炎という怪我かもしれません。

痛む部位はランナー特有の疲労骨折の部位と近いことも知られています。

それぞれについて知り、適切な対応ができるようにしたいところです。

今回、鵞足炎と腸脛靭帯炎についてスポーツ医学検定公式テキストをもとに述べていきます。

鵞足炎とは

ハムストリングスの一部である半腱様筋や薄筋、また縫工筋が脛骨内側に付着する部位を鵞足と呼ぶ。

この部位を炎症が生じて痛みが生じる。

 

鵞足炎の受傷機転

ランナーで多くみられ、過度の運動負荷や繰り返しの動作により炎症が起きる。

ハムストリングのタイトネスなども原因になる。

 

鵞足炎の症状

膝内側で関節から約3cm遠位に痛みや圧痛が生じる。

 

鵞足炎の検査

X線検査やMRI検査で捉えられる所見は少ない。

しかし、脛骨近位に生じる疲労骨折で痛む部位と近いため、症状が持続する場合には鑑別する必要がある。

 

鵞足炎の治療

保存療法が基本であり、運動後の痛みに対してはRICE処置を行い、炎症を抑える。

運動量の調整を行い、痛みが強い場合は運動を中止する。

痛みがひどい場合には炎症鎮痛剤の内服や注射を行うこともある。

 

鵞足炎の復帰の流れ

アスレチックリハビリテーションが重要であり、ハムストリングのストレッチのほか、適切な下肢アライメントを意識した使い方を習得していくことが必要である。

X脚で外反膝があり、鵞足への負担を増加される要因がある場合、インソールで矯正することもある。

膝が内側に入らないようなランニングのフォームの修正を行うこともある。

痛みの改善に伴い、軽い負荷より段階的に運動を開始する。

 

腸脛靭帯炎とは

大殿筋、大腿筋膜張筋から連続し、大腿骨外側から脛骨の間にある部位を腸脛靭帯と呼ぶ。

特に膝の外側で炎症を起こし痛みを生じる。

 

腸脛靭帯炎の受傷機転と検査

ランナー膝とも呼ばれ長距離ランナーで多くみられる。

ランニングによる繰り返される膝の屈伸で、腸脛靭帯と大腿骨外側上顆が摩擦を生じると考えられ、腸脛靭帯の緊張が高い状態で発生しやすい。

そのため臀部から大腿外側部にかけてのタイトネスの少ない状態でランニングを行いたい。

適切なランニング量を心がけ、過度の運動負荷を避けることや、適切なシューズを履くことが予防につながる。

X線検査やMRI検査で異常所見が認められることは少ない。

 

腸脛靭帯炎の治療

保存療法が基本である。

ストレッチ、基本動作訓練、筋力訓練などのアスレチックリハビリテーションを行う。

痛みが強い場合、運動を軽減もしくは中止して患部のRICE処置を行い、炎症を抑える。

症状がひどい場合には消炎鎮痛剤の内服や外用薬を使用する。

 

腸脛靭帯炎の復帰の流れ

腸脛靭帯の摩擦を減らすために、臀部から大腿外側部にかけてストレッチを十分に行う。

加えて臀部、大腿四頭筋、ハムストリングの筋力トレーニングを行う。

大腿四頭筋の強化では内側と外側のバランスを意識して強化を行う。

痛みが軽減すれば軽い負荷から段階的にランニングを再開する。

再発予防には練習前のウォーミングアップ、練習後のクールダウンを徹底して行うことが大切である。

 

おわりに

最後にまとめます。

鵞足炎とその症状

鵞足(半腱様筋、薄筋、縫工筋が脛骨内側に付着する部位)に炎症

→膝内側で関節から約3cm遠位に痛みや圧痛

鵞足炎の受傷機転

・ランナーに多い

・過度の運動負荷や繰り返しの動作→炎症

・ハムストリングの柔軟性低下なども原因

鵞足炎の検査

・X線検査やMRI検査→捉えられる所見は少ない

・脛骨近位の疲労骨折で痛む部位と近い

→症状が持続する場合には鑑別必要

鵞足炎の治療

・保存療法が基本

・運動後の痛み→RICE処置にて炎症抑制

・運動量の調整&痛みが強い→運動中止

・痛みがひどい場合→炎症鎮痛剤内服や注射を行うことも

鵞足炎の復帰の流れ

・リハビリが重要

・ハムストリングのストレッチ

・適切な下肢アライメントを意識した使い方の習得

→膝が内側に入らないようなランニングのフォームの修正

・X脚で外反膝→インソールで矯正することも

・痛みの改善に伴い、軽負荷より段階的に運動

腸脛靭帯炎とその症状

腸脛靭帯(大殿筋、大腿筋膜張筋から連続し、大腿骨外側から脛骨の間にある)の特に膝の外側で炎症→痛み

腸脛靭帯炎の受傷機転と検査

・長距離ランナーに多い(別名ランナー膝)

・ランニングによる繰り返される膝の屈伸

→腸脛靭帯と大腿骨外側上顆で摩擦

・腸脛靭帯の緊張が高い状態で発生しやすい

・X線検査やMRI検査→異常所見が認められることは少ない

腸脛靭帯炎の治療

・保存療法が基本

・ストレッチ、基本動作訓練、筋力訓練などのリハビリ

・痛みが強い→運動を軽減or中止

→患部のRICE処置による炎症抑制

・症状がひどい場合→消炎鎮痛剤の内服や外用薬を使用

腸脛靭帯炎の復帰の流れ

・臀部から大腿外側部にかけてのストレッチ

→腸脛靭帯の摩擦を減らす

・臀部、大腿四頭筋、ハムストリングの筋トレ

→大腿四頭筋の強化は内側と外側のバランスを意識

・痛みが軽減→軽負荷から段階的にランニング再開

・再発予防

→練習前のウォーミングアップ&練習後のクールダウン

→適切なランニング量(過度の運動負荷を避ける)

→適切なシューズを履く

以上、

スポーツ医学検定 公式テキスト 1級 [ 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構 ]

の「スポーツ外傷・障害の知識 その他(膝)」からの引用でした。

なおスポーツ医学検定についての詳細は公式サイトをご覧ください。

読者の健康で楽しいスポーツの一助になれば幸いです。

では。